生体内の小胞体ストレスレベルを測定することができれば、小胞体ストレス関連疾患の前兆あるいは病態進行を捉えることにつながると考えられることから、細胞外から非破壊的に細胞内の小胞体ストレスレベルを測定する技術を確立することを目指した。小胞体ストレスによって小胞体で作られるタンパク質の多くは翻訳抑制や折り畳み不全になりタンパク質分解を受けるが、小胞体ストレス時にむしろ翻訳が促進されるようなタンパク質も知られている。このようなタンパク質の中で細胞外に放出されるものが存在する可能性があった。そこで小胞体ストレス時に細胞外に放出される因子の探索として、サプシガルジンやツニカマイシンといった各種小胞体ストレス誘導剤を培養細胞に負荷し、培養上清を回収、変動する因子をプロテオーム解析にて探索した。その結果、小胞体ストレス依存的に細胞上清中に放出されるタンパク質群を見出した。細胞種により放出されるタンパク質群には違いがあったが、その中でも細胞種間で共通して小胞体ストレス負荷により放出されるタンパク質に着目し、詳細な解析を行った。タンパク質検出として一般的に行われるウエスタンブロッティング法では抗ターゲット因子抗体の非特異的反応で検出が困難であったことから、ELISA法による検出を試みた。その結果、小胞体ストレス依存的にターゲット因子が細胞外に放出されることが確認された。この結果は、ターゲット因子の測定により、細胞を破壊することなく細胞内の小胞体ストレスの有無を検出できる可能性を示していた。
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