研究課題/領域番号 |
18K19644
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山下 元三 大阪大学, 歯学部附属病院, 講師 (90524984)
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研究分担者 |
藤原 千春 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00755358)
岩山 智明 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (80757865)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 歯周病 / 時間制御 / NMN / 歯根膜細胞 / 細胞老化 / SIRT / NAMPT / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
サイトカイン療法や組織幹細胞移植療法が、臨床応用されている今日においても、高齢者が、炎症のない健康な歯周組織を維持、機能させることは極めて困難である。本課題において、加齢性の全身性慢性疾患に共通の基盤病態である細胞老化を標的とした新規概念の歯周病治療法の開発に挑む。成人性疾患の臓器においてはニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)合成系とNAD+依存性脱アセチル化酵素SIRT1の機能低下が報告されている。そこで、NAD+に変換される代謝産物NMNの補充により、末梢の歯周組織並びに全身の臓器連関を統る脳視床下部のNAD+/SIRT1経路の賦活をはかり、臓器老化の抑制と全身の老化の抑制を目指すものである。さらに、老化が亢進した個体に対しては、小分子化合物の全身投与による老化細胞除去療法を導入する事で、口腔と全身の生物学的老化を細胞レベルで制御可能か検討する。そこで本研究では、NAD+合成系の中間代謝産物であるNMN投与により、生体内において、中枢の脳視床下部及び末梢である歯周組織のN AD+合成系―SIRT1経路を増強することで全身と歯周組織の細胞老化に及ぼす影響を炎症と幹細胞能に焦点をあて、in vitro、in vivo実験モデルを用いて解析、検討することとした。平成30年度は、NMN補充がヒトの歯周組織を構成する細胞、とりわけ歯周組織再生の中 心となる歯根膜細胞の細胞老化に及ぼす影響についてin vitro実験と次年度の動物実験の予備実験を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始の平成30年度は、NMN補充が、ヒトの歯周組織構成細胞(歯肉線維芽細胞、歯根膜細胞、血管内皮細胞)とりわけ歯周組織再生の中心となる歯根膜細胞に焦点を当て、細胞老化に及ぼす影響について解析した。老化細胞においては、NAD+合成系が加齢により減弱することから、初代培養歯根膜細胞にNMNを添加、in vitroにて複製老化を誘導し、NMNの補充あるいは、Senolytic drugs(老化細胞除去薬剤)の一つであるシャペロン阻害剤もしくはシャペロン活性化剤が細胞機能におよぼす影響を検討した。1、細胞内NAD+合成量、NAMPTの発現量、2、 SIRTs各種、3 、概日時計遺伝子(CRY1/2、PER1/2)の発現量、4 、Porphyromonas gingivalis LPS刺激に対する炎症応答、5、 幹細胞能、6、 ストレス応答、7、ミトコンドリア活性に及ぼす影響について検討した。その結果、NMN並びにシャペロン活性化剤投与は炎症を抑制し、シャペロン阻害剤投与が炎症応答の誘導に関与することを示唆する実験結果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
平成31年は、前年度に引き続き、NMN補充が、ヒトの歯周組織構成細胞(歯肉線維芽細胞、歯根膜細胞、血管内皮細胞)の細胞老化に及ぼす影響について解析を継続する。その際に、エネルギーATPの代謝産生、アポトーシス誘導に重要なミトコンドリアに焦点を当て解析を実施する予定である。そして、細胞老化にNMN補充並びに老化細胞除去療法が及ぼす効果をin vivo 歯周病モデルマウスにて検討する。70週齢のC57BL/6J-Agedマウスの歯周組織にP.g.菌を感染、絹糸を結紮することで、高齢歯周炎モデルを構築し、歯周組織の炎症並びに老化病態を検討する。また、老化細胞除去薬剤の投与により、老化細胞の除去が歯周組織の病態に及ぼす影響を検討する。また、NMN投与による全身性のNAD+合成系/SIRT1経路の活性化と老化細胞除去療法が、歯周病と全身疾患、糖尿病に及ぼす影響については個体レベルで解析にあたる。
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