研究課題
2019年は、昨年度に引き続き、NAD+に変換される代謝産物NMNの補充がヒトの歯周組織構成細胞に及ぼす影響について解析した。そして、高週齢のC57BL/6Jマウスの臼歯に絹糸を結紮することで高齢マウス歯周炎モデルを構築し、NMN投与と非投与群 について検討した。1、初代培養歯根膜細胞へのNMN補充の役割の解析in vitroにて複製老化を誘導した歯根膜細胞は、NMN(100μM)の添加により、細胞内のNAD+合成量、NAMPTの発現量、SIRTsの発現量を増加させること、概日時計遺 伝子CRY1/2、BMAL1、PER1/2の発現量に影響を及ぼすことを見出した。ミトコンドリア機能に重要なSIRT3、6の発現量の増強を認めたことから、ミトコンドリア障害の指標となる細胞内活性化酸素種ROSを検討した。その結果、老化歯根膜細胞ではROSの明らかな減少とその分子機構の一つとして、SIRT3-PGC1aの増強を見出した。これらの結果より、NMNは老化歯根膜細胞のミトコンドリアの賦活化をその薬理作用の中心とすることが示唆された。また、Senolytic drugs(老化細胞除去薬剤)の一つであるシャペロン阻害剤の作用を検討した結果、シャペロン活性化剤は老化歯根膜細胞の小胞体ストレスを低減し、シャペロン阻害剤は正常歯根膜細胞のコラーゲンに代表される細胞外基質タンパク産生を抑制することが明らかとなった。2、高週齢のC57BL/6JマウスへのNMN投与の解析60-70週齢のC57BL/6JマウスにNMNを腹腔投与し、1ヶ月後に口腔内所見、顎骨のμCT解析による骨吸収量の解剖学的測定後に歯周組織切片を作製し、検討した。絹糸を結紮した高週齢マウスは、著明な骨吸収がμCTと組織解析により確認された。NMNを腹腔投与したマウスは、コントロールと比較して、毛並みの改善、活動増加が確認された。
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