研究課題/領域番号 |
18K19648
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
石丸 直澄 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 教授 (60314879)
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研究分担者 |
新垣 理恵子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (00193061)
工藤 保誠 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(歯学域), 准教授 (50314753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 自己免疫疾患 / Tfh細胞 / GCB細胞 / シェーグレン症候群 / 胚中心反応 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
自己免疫疾患は自身の臓器や細胞が免疫反応の標的となる疾患であり、自己と非自己を厳密に区別するはずの免疫システムの適切な機能から明らかに逸脱している。全身どの臓器も標的となり、単一の原因ではなく多因子による発症機序が存在しているため、病態メカニズムは複雑で、自己免疫疾患の診断は困難な場合があり、病因論に基づいた根本的な治療法の開発には至っていないのが現状である。本研究では、シェーグレン症候群の疾患モデルなどを、自己免疫性胚中心反応という新たな概念を提唱するとともに、その詳細な機構を明らかにし、病態と自己抗体の新たな関係を解明することが大きな目的であり、これまで診断の一助として考えられてきた自己抗体の新たな役割を見出すことによって、病態・病因に即した画期的な診断法の開発あるいは根治療法の開発につながる可能性が十分にある。 本研究では、シェーグレン症候群の疾患モデルを用い、胚中心反応に関与する免疫担当細胞の機能を詳細に検討したところ、Tfh細胞ならびにGCB細胞の細胞数がモデルマウスで対照マウスに比較して優位に高くなっていた。また、抗CD20抗体をシェーグレンモデルマウスに投与することにより、胚中心反応を抑制するとともに、自己免疫病変の抑制も可能であった。さらに、モデルマウスのTfh細胞の機能に重要な分子に関して網羅的遺伝子解析にて探索したところ、Tfh細胞の分化に重要な因子であるAscl2などの発現が亢進していた。現在、Bcl6 floxマウスとCD4Creマウスを掛け合わせることによって、Tfh細胞の最終分化を抑制できる系を用いてAscl2の機能解析と自己免疫疾患の発症との関連性を検討中である。国内外での学会発表を勢力的に実施している。また、林分作成に関しても準備を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度には、7本の欧文原著(査読あり)とともに、邦文著書1本、和文総説を3本公表している。さらに、国際シェーグレン学会、日本病理学会のシンポジウム、各学会での特別講演の演者を務めた。また、国内学会発表においても日本病理学会、日本免疫学会、日本シェーグレン症候群学会などで発表している。ほとんどの業績が、本研究と関連する内容である。 自己免疫疾患の発症に関する内容(Oral Sci Int. 1-3 in press 2019, Front Immunol 9:2594, 2018, Inflammation. 2018 41:1172-1181)、 以上のことから、当初計画していた内容に加えて本研究をさらに発展できるような研究業績をあげており、おおむね順調に進んでいるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
自己免疫疾患の発症には様々な因子が複雑に関連していることが知られており、一つの因子でその病態を説明することは困難である。そのため、本研究でも多角的な観点から様々な研究手法を用いて解析を進めていく予定である。すでに、シェーグレン症候群モデルでのGCB及びTfh細胞数は対照マウスに比較して有意に増加することが明らかにされた。さらに、実際の自己免疫疾患患者サンプルを用いて疾患モデルで得られた知見を詳細に検証することによって臨床応用を目指したトランスレーショナルリサーチに移行する予定である。自己免疫疾患モデル(シェーグレン症候群モデル)と対照マウスを用いて、自己免疫モデルにおける各分化段階のB細胞及び形質細胞、T細胞、樹状細胞における発現遺伝子を網羅的解析によって自己免疫性GC反応関連遺伝子群を抽出しは完了しており、それらの自己免疫疾患の発症における機能的役割を探索する作業に着手している。加えて、免疫グロブリンの遺伝子再構成、体細胞超変異、クラススイッチ組み換えなど重要な免疫現象を種々の方法にて検討する予定である。 自己抗体の産生機構の解明とともに、自己抗体の生体内での役割を検討する。抗体の役割には抗原の中和作用、オプソニン化、細胞溶解、炎症誘発などが報告されている。一方、自己抗体の機能に関しての報告は乏しいことから、各自己免疫疾患モデル血清から自己抗体を精製単離し、免疫細胞分画への影響をin vitroで解析するとともに、標識した自己抗体をin vivoに投与することによって、生体内での自己抗体の役割を解明する。また、最終的には、自己免疫疾患の病態と自己抗体の役割を明らかにすることによって、自己抗体を用いた新たな診断・治療法を目指した臨床応用研究に発展させる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度にコンディショナルノックアウトマウスを用いた実験を進める必要があるため、マウス実験への支出を優先する目的があった。
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