研究実績の概要 |
自己免疫疾患は自身の臓器や細胞が免疫反応の標的となる疾患であり、自己と非自己を厳密に区別するはずの免疫システムの適切な機能から明らかに逸脱している。全身どの臓器も標的となり、単一の原因ではなく多因子による発症機序が存在しているため、病態メカニズムは複雑で、自己免疫疾患の診断は困難な場合があり、病因論に基づいた根本的な治療法の開発には至っていないのが現状である。本研究では、自己免疫性胚中心反応という新たな概念を提唱するとともに、その詳細な機構を明らかにし、病態と自己抗体の新たな関係を解明することが目的である。 本研究では、シェーグレン症候群の疾患モデルを用い、胚中心反応に関与する免疫担当細胞の機能を詳細に検討したところ、Tfh細胞ならびにGCB細胞の細胞数がモデルマウスで対照マウスに比較して優位に高くなっていた。また、抗CD20抗体をシェーグレンモデルマウスに投与することにより、胚中心反応を抑制するとともに、自己免疫病変の抑制も可能であった。さらに、モデルマウスのTfh細胞の機能に重要な分子に関して網羅的遺伝子解析にて探索したところ、Tfh細胞の分化に重要な因子であるAscl2などの発現が亢進していた。CD4Cre Bcl6 floxマウスに新生仔胸腺摘出を行うと、疾患モデルと同様にAscl2の発現が亢進したことから、Tfh細胞分化の初期段階でAscl2の発現が極めて重要な役割を果たしていることが判明し、自己免疫性胚中心反応はAscl2によるTfh細胞の制御機構が関与していることが明らかになった。これらの成果は、日本免疫学会(2019年)、日本病理学会(2019年)などで発表するとともに、細胞(2018, 50:528-531)、臨床免疫・アレルギー科(2020, 73:241-248)、Am J Pathol (2019, 9440:30712-307126)で報告した。
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