研究課題/領域番号 |
18K19651
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
友清 淳 九州大学, 大学病院, 講師 (20507777)
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研究分担者 |
前田 英史 九州大学, 歯学研究院, 教授 (10284514)
長谷川 大学 九州大学, 大学病院, 助教 (20757992)
吉田 晋一郎 九州大学, 大学病院, 助教 (30778866)
濱野 さゆり 九州大学, 歯学研究院, 助教 (40757978)
和田 尚久 九州大学, 大学病院, 教授 (60380466)
杉井 英樹 九州大学, 大学病院, 助教 (80802280)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 歯根膜幹細胞 / ゲノム創薬 / iPS細胞 / 神経堤細胞 / SNP / 幹細胞賦活化 / 再生療法 |
研究実績の概要 |
歯根膜組織(PDL)に存在する幹細胞(歯根膜幹細胞:PDLSC)は、歯周組織全体の再生に重要な役割を果たすことが知られている。そこで我々は、PDLSCの持つ再生能の賦活化により、効率的および効果的に歯周組織全体を再生させる遺伝子を標的とした、新しい歯周組織再生薬の開発を計画した。 我々はヒト人工多能性幹細胞(iPSC)から、神経堤細胞に極めて近い表現型を示すiPSC-NCLCを樹立し、さらにiPSC-NCLCをPDLSCの表現型を示すiPSC-NCLC-PDLへ分化させる方法の確立に成功している(Hamano S et al. Stem Cells Dev. 2018 Jan 15;27(2):100-111)。我々の研究成果により、神経堤細胞およびPDLSCsの表現型を有する細胞を多数実験に使用することが可能となり、結果として神経堤細胞がPDLSCへと分化する過程における包括的な遺伝子解析が可能となった。 一塩基の変異であるSingle nucleotide polymorphism(SNP)は、アミノ酸置換を誘導し、タンパク質の量、構造、発現時期、および機能等に変化を引き起こすことから、様々な表現型や疾患を司る重要な因子であると考えられている。そこで我々は、SNPによる遺伝子変異の結果、歯根膜幹細胞が機能を果たせなくなることで、歯周組織の再生が阻害されると考え、これまでSNPと歯周病の関連性が報告されている遺伝子群に着目した。 本年度はiPSC-NCLCおよびiPSC-NCLC-PDLを用いてマイクロアレイ解析を行ったのち、変動の大きい遺伝子を同定したのち、それらの中でSNPと歯周病の関連性が報告されているものの選出を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
iPSC-NCLCおよびiPSC-NCLC-PDLを用いてマイクロアレイ解析を行った結果、iPSC-NCLC-PDLにおいて2倍以上の発現上昇を認める1030遺伝子の同定に至った。これらの中には、SNPが生じることで歯周病が増悪することが報告されているIL-6、IL-18、PPARG、TLR-4などが含まれていた。これらの遺伝子群における変異は、歯根膜幹細胞の機能異常を誘導することで、歯周組織の再生を阻害し、歯周病を増悪させている可能性が推察される。そこで我々は現在、これらの遺伝子群に対するsiRNAをiPSC-NCLCへと導入したのち、iPSC-NCLC-PDLへの分化誘導実験を行っている。siRNAの導入により、iPSC-NCLCからiPSC-NCLC-PDLへの分化誘導が阻害された場合には、その遺伝子が歯根膜幹細胞の特徴づけに重要であることが強く示唆され、これらの遺伝子の活性化は、歯根膜幹細胞を賦活化に繋がると推察される。
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今後の研究の推進方策 |
siRNAの導入により、iPSC-NCLCからiPSC-NCLC-PDLへの分化誘導を阻害する遺伝子を選出したのち、次にそれらの遺伝子に対して詳細なキャラクタライズを行う。まずiPSC-NCLCへと遺伝子導入し、iPSC-NCLC-PDLへと分化誘導を行い、分化誘導の加速化が図られるかについて検討を行う。加速化が確認できた遺伝子は、歯根膜幹細胞を賦活化できる可能性があると考えられる。次にハイスループットスクリーニングを行い、この遺伝子を標的とするリード化合物の同定を行う。この化合物に対して、バイオビックデータ解析や構造最適化等を用いて化学的修飾を行い、有効性、安全性、および安定性に優れたアカデミア発歯周組織再生薬の開発へと繋げる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度では免疫不全ラットを用いた細胞移植実験を計画していたが、実行できなかった。免疫不全ラットは1匹当たり5万円程度と高額であり、またその飼育にも費用が掛かることから、これらの予算が必要無かったため、本年度の予算が当初の予定より少なくなったと考えられる。そのため、動物実験系の予算分を次年度に繰越す必要があると考えられる。
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