研究課題
近年、味覚受容体は、口腔のみならず視床下部や消化管、膵臓β細胞など様々な栄養関連臓器で発現することから、味覚の異常は、口腔のみならず、“全身 の臓器でも味覚異常”が生じて、栄養・摂食・嚥下障害や生活習慣病(高血圧・糖尿病・高脂血症)の発症原因となる可能性が示唆されている。 味細胞は少なくとも5種類に分類され、それぞれ異なる5基本味に対する特異的な味覚受容体を発現して味物質を受容している。また、この味細胞の寿命は約10 日と短いにも関わらず、味覚情報(認知)は恒常的に維持されている。これらのことから、味細胞と味神経とは、生まれてから死ぬまでの全ライフコースを通して絶えず配線/断線を繰り返しながら味質選択的に配線されることで、外・内環境に適切な「摂食行動適応」が達成される可能性が示唆される。その一方で、加齢や不規則な生活習慣により「ミス配線」も起こりやすくなることも考えられ、この慢性化が上記の疾病発症、つまり、「口腔および全身の味覚感受性の低下」から「体内栄養素の代謝異常」、そして「生活習慣病など個体機能の低下」へと繋がる可能性が推定された。そこで、本研究では、この“未知の動的な配線制御機構”を明らかにするために、我々の予備実験から見出された“味蕾”および“味神経”に「共通」に発現 する16種類の細胞表面蛋白(Cadherin: Cdh)ファミリーに着目し、これらが5基本味(=5栄養素)(甘味=糖、塩味=Na+、うま味=アミノ酸、酸味=H+、苦味=毒 物)に特異的な配線制御分子として機能している可能性について遺伝子改変マウス/分子生物/神経生理/行動生理学的解析により追求した。この結果、プロトカドヘリン20が甘味受容細胞および味覚神経の両者に特異的に発現しており、甘味情報ラインの配線制御メカニズムに寄与している可能性が示唆された。
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