研究課題
昨年度(令和元年度)の検討で、PEPナノ粒子が高い骨親和性を有する一方で、生体内では網内系細胞による補足により骨に到達することが難しいことが示されたことから、本年度(令和2年度)は、網内系細胞による補足抑制作用が期待される2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)とブチルメタクリレート(BMA)の共重合体であるpoly(MPC-co-BMA)(PMB)を付加したPMB-PEPナノ粒子を作成し、in vitroおよびin vivoにて性状解析を行った。1. PMB-PEPナノ粒子のマクロファージへの取り込み: マウス・マクロファージ細胞株RAW264.7を用いたin vitroでの取り込み実験において、PMB-PEPナノ粒子はPEPナノ粒子と比較して細胞内への取り込みが著明に抑制された。2. PMB-PEPナノ粒子の骨親和性: 牛骨スライスを用いた吸着試験において、PMB-PEPナノ粒子はPEPナノ粒子と同様の高い骨親和性が認められた。3. PMB-PEPナノ粒子の生体内動態: マウスへの静注24時間後の動態を観察したところ、PMB-PEPナノ粒子の肝臓への集積は、PEPナノ粒子と比較して著明に抑制されていた。以上の結果から、PMBの付加が網内系細胞による補足に対し抑制的に作用したことが示唆される。にもかかわらず、PMB-PEPナノ粒子の骨組織への局在はPEPナノ粒子と同様にわずかに認められるのみであった。4. PMB-PEPナノ粒子の皮下腫瘍への局在: 血管透過性・薬物滞留性の亢進から、ナノ粒子はがん組織に選択的に集積するとされ、EPR効果(Enhanced Permeation and Retention Effect)と呼ばれている。腫瘍細胞を皮下移植したマウスへPMB-PEPナノ粒子を静注したところ、皮下腫瘍での局在は認められたものの、組織内に偏在していた。
2: おおむね順調に進展している
令和元年度は、交付申請書に記載した研究実施計画に沿って実験を行い、計画の目標はほぼ達成されたと評価している。
令和元年度の検討で、PMB-PEPナノ粒子が高い骨親和性と網内系細胞による補足回避が確認された一方で、骨組織への集積能が十分に認められなかったことから、本研究計画の最終年度となる令和2年度は、ビスフォスフォネート製剤であるアレンドロネート(ALN)を付加したPMBナノ粒子(PMBAナノ粒子)を作成し、①PMBAナノ粒子の骨親和性、②PMBAナノ粒子の生体内動態、③抗がん剤を付加したPMBAナノ粒子の抗腫瘍作用、④PMBA-DTXナノ粒子の生体内動態、⑤PMBA-DTXナノ粒子の骨転移に対する作用、についてin vitroおよびin vivoにて解析を行っていく予定である。
令和元年度は、ほぼ予定通りに実験を行い、それに必要な消耗品の購入を中心とした支出を行ったが、割引等のため端数程度の繰越金が生じた。令和2年度の研究に必要な消耗品の購入に充てる予定である。
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すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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