昨年度の検討で、PMB-PEPナノ粒子の高い骨親和性と網内系細胞による補足回避が確認された一方で、in vivoで骨組織への集積能が十分に認められなかったことから、本研究計画の最終年度となる今年度は、PEPの代わりにビスフォスフォネート製剤であるアレンドロネート(ALN)を付加したPMBナノ粒子(PMBAナノ粒子)を作成し、その性状および骨転移に対する作用について検討した。 1. PMBAナノ粒子の骨親和性:牛骨スライスを用いた吸着試験において、PMBAナノ粒子は、ALNを付加していないPMBナノ粒子と比較して、より高い骨親和性が認められた。 2. PMBAナノ粒子の生体内動態:マウスへの静注実験において、PMBAナノ粒子は骨梁表面への高い集積が認められた。また、その局在は投与2週後にも明瞭に確認でき、長期間に渡るナノ粒子の滞留が示唆された。 3. 抗がん剤を付加したPMBAナノ粒子の抗腫瘍作用:抗がん剤(ドセタキセル)を付加したPMBA(PMBA-DTX)ナノ粒子の抗腫瘍作用をin vitroにて検討したところ、ドセタキセル単独の場合と比較して同程度の抗腫瘍作用が認められ、PMBAナノ粒子の付加がドセタキセルの作用に影響しないことが確認された。 4. PMBA-DTXナノ粒子の生体内動態および骨転移に対する作用:マウスへの静注24時間後の動態を観察したところ、ドセタキセルの付加はPMBAナノ粒子の骨梁表面への集積に影響を与えなかった。次に、骨転移モデルマウスを用い、PMBA-DTXナノ粒子の作用を評価したところ、PMBA-DTXナノ粒子は骨転移を有意に抑制した。
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