研究実績の概要 |
副甲状腺ホルモン(PTH)によって骨細胞で活性化される神経ペプチドY(NPY)の生理的機能の解明を目的とし本研究を行なった.まず,in vitro で骨芽細胞と骨細胞において,PTHで刺激した場合のNPYの重要な生理機能の一部を解明できた.PTHで骨芽細胞を刺激してもNPYやGlut1(グルコーストランスポータ1)に変化は起こらないが,3次元培養によって誘導した骨細胞をPTHで刺激すると,NPY, Glut1, Glut4の発現が強く抑制されることが明らかとなった.次に,NPYをCRISPR-Cas9でノックアウトし,PTHで刺激しエネルギー代謝関係の遺伝子反応を調べた.骨芽細胞ではGlut1とGlut4が強く発現し,3次元培養で誘導した骨細胞でもGlut1は強く発現した.このことから,骨芽細胞と骨細胞をPTHで刺激すると,NPYはGlutの発現を抑制してエネルギー代謝を停滞させることが示唆された.長期的なPTHの過剰分泌が糖尿病の悪化を引き起こす一因になりうるのかもしれない.続いて動物実験のために, GeneArtTM Precision gRNA Synthesis kit を使って複数のガイドRNAを構築し, MC3T3E1細胞を用いて最適なloxP導入部位を決定した.この切断部位に150-merで構築したleft ssODNおよびright ssODNのloxP配列導入を試みた.細胞に, 0.2 ug (cas9): 100-400 ng (left ssODN) : 100-400 ng (light ssODN)の濃度で,Neon #14 or #16のプロトコールで行ったがloxP配列の導入はうまく起こらなかった.現在,ssODNの長さを調整しloxP配列の導入を目指しているところである.
|