研究課題/領域番号 |
18K19659
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石黒 信久 北海道大学, 大学病院, 准教授 (40168216)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
キーワード | 耐性緑膿菌 / 手洗いシンク / 除菌 |
研究実績の概要 |
薬剤耐性菌が世界的に増加する一方、新たな抗菌薬の開発は減少傾向にあり、国際的に大きな課題となっている。2016年4月、厚生労働省により薬剤耐性(AMR)アクションプランが決定された。その成果指標の一つに「緑膿菌のカルバペネム耐性率を2020年までに10%以下(2014年には20%)にする」ことが挙げられている。 申請者は「手洗いの除菌を行い、手洗いを介した耐性緑膿菌伝播のサイクルを断ち切ることで、緑膿菌のカルバペネム耐性率を低下させることができる」と考え、これを検証すると同時に、その実現のための具体的な対策を提示することが本研究の目的である。 北海道大学病院の特定の病棟では、過去にカルバペネム系、キノロン系、アミノグリコシド系の3剤に耐性を示す多剤耐性緑膿菌(MDRP)のアウトブレイクを経験したが、2007年7月以降、該当病棟の手洗いを第4級アンモニウム塩をベースとする除菌薬を用いて除菌を行うことで、アウトブレイクを鎮静化させた実績がある。 2005-2017年に該当病棟の入院患者から検出されたカルバペネム耐性緑膿菌の保存菌株304株を対象として、PCR-based ORF Typing (POT)法とMulti-locus Sequence Typing (MLST)法を用いた遺伝子タイピングを行ったところ、手洗いの除菌を開始した2007年を境に(アウトブレイクの原因となった)MDRP株は激減し、2012年後半以降は検出されなくなった。 これにより、手洗いの除菌を行うことが、アウトブレイクを鎮静化させる一助になったことが検証された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画通り、保存されている緑膿菌株304株全ての遺伝子タイピングを終了させることが出来た。現在、論文を作成中である。 札幌市内のA病院の患者から検出された緑膿菌の50%(30株中15株)がカルバペネム耐性であり、カルバペネム耐性株の53.3%(15中8株)が同一遺伝型であった。この8株が検出された3つの病棟の水回り(ナースステーションのシンク、患者個室の手洗い、ユーティリティの汚物槽)からも同一遺伝型のカルバペネム耐性緑膿菌が検出された。この病院でも水回りを介したカルバペネム耐性緑膿菌の伝播が起きていることを示している。
|
今後の研究の推進方策 |
上記A病院において検出されたカルバペネム耐性緑膿菌の伝播経路を解析すると同時に、A病院の水回りの除菌を行い、実際に患者からのカルバペネム耐性緑膿菌の検出が減少することを検証したい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により論文作成に必要な意見交換や確認実験ができなかった。 次年度は、本研究を完成させて、論文化を目指す。
|