研究課題
研究開始当初の背景:内視鏡手術はこれからの外科医療の根幹をなす手技であるが、卒前・卒後を通じて、基本的な理論や安全な手技を習得する機会はない。また、卒前教育では一定のルールのもとで侵襲的医行為の実施が可能であるが、患者への安全性を考慮すると内視鏡手術の実習は困難であり、シミュレーターやスキルスラボで代用せざるを得ない。研究の目的:系統的解剖実習は医学の礎であり、医学教育の端緒にふさわしい。しかしその後に続く膨大な医学教育に知識と経験は埋もれてしまい、臨床実習の開始時には忘却の彼方にある。そこで解剖学と臨床医学をつなぐ新たな教育の可能性を探るべく、献体を使用した内視鏡外科手術に関する臨床解剖実習プログラムのニーズと教育効果を検討した。研究の方法:近年、生体に近い状態で遺体保存が可能なチール法が普及したことで、献体を用いた手術手技研修が行われるようになった。本研究はチール法固定献体を2体用いて実施した。事前に医学生691名に対しアンケート調査を行い、210名より回答を得た。次いで4年生100名に対し胸腔鏡による食道癌手術の臨床解剖実習(模擬手術)を、半数ずつ2回実施、希望者は術者や助手を体験し、それ以外の者は見学とした。実習前後に解剖に関する小テストを行い、教育効果を検証した。研究成果:系統的解剖実習と新たな臨床解剖実習の有用性に関する質問では、それぞれを94%、91%の学生が有用と回答した。臨床解剖実習への参加希望に関する質問では、医学部生の90%が参加を希望し、57%が術者としての参加を希望した。小テストの成績(10点満点)の平均は、実習前後で5.1点から6.9点へ有意に上昇した。これらの結果から、従来の系統的解剖実習と臨床解剖実習は並立するものであり、臨床解剖実習は新たな教育カリキュラムとして臨床実習の一環として導入する事が望ましいと考えられた。
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日本外科学会雑誌
巻: 120 ページ: 511-516
日本整形外科学会雑誌
巻: 93 ページ: 601-605
北海道外科雑誌
巻: 64 ページ: 43-50
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