化学物質による人体への悪影響は工業化された現代社会の大きな問題である。細胞死は毒性の究極の形態であり、アポトーシスが細胞死の形態として広く知られておりその作用機序の研究も進んでいる。しかしながらもう一つの細胞死の形態であるネクローシスの作用機序の解析はアポトーシスと比べ大きく遅れている。化学物質による毒性の一例としてブタノールによる心筋細胞死を調べることで、濃度依存的な毒性の上昇の背後にアポトーシスからネクローシスへの細胞死モードの変化があることを突き止めた。ネクローシスはアポトーシスより重度の障害をもたらす細胞死であり、毒性の重度化の背景にある機構の一端を明らかにすることができた。
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