研究課題/領域番号 |
18K19679
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
齋藤 いずみ 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (10195977)
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研究分担者 |
松尾 貴巳 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (80316017)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 周産期 / 経営学 / MBA教育 / マネージメントコントロール / 医療の質 |
研究実績の概要 |
神戸大学経営学研究科のMBAコースは、約30年の蓄積を持ち、教育法式は「神戸方式」と呼ばれ全国から学生が集まる日本屈指のMBAコースである。その特徴は、「研究に基礎を置く」、「現場で働きながら学ぶ」、両者を統合した「プロジェクト方式」の3本柱である。今後は産業界のみならず、最新の経営学研究の成果を、保健・医療分野、特にこれまで分析されてこなかった「周産期医療」に取り入れ、MBAにおける研究理論や知識の蓄積を、周産期医療に応用・活用しようとする本試みである。 医療経営学分野では、マネージメントコントロールの知識を基盤に、診療科別の医療費を分析し、大学病院や他の病院の経営改善に貢献した。周産期医療の中でも、世界共通基準のBaby friendly hospital審査に合格し高い母乳育児率の実現や、妊産婦の希望するバースプランの実現等、周産期医療や看護の質の向上に貢献しても、現在は経営面で全く評価されない事象に着目し、その価値を経営に還元してきた。MBA教育における企業研究で蓄積された理論や知識を基に、経営的に評価されていない周産期医療分野で実施されている、母児への看護の質を上げるいくつかの成果を、付加価値の創造と位置付け、経営学的観点から周産期医療・看護を多角的・総合的に分析し、周産期部門を、病院における不採算部門からの脱却を目指す。妊産婦に効果的な看護の実施や保健指導の実施による、周産期医療や看護の質の向上に貢献しても、経営面で評価されない事象に着目する。昨年度は、周産期分野における産科混合病棟の「看護時間」に着目し、24時間看護時間を測定し、その結果に基づき、助産師を4人増加させ看護人員配置体制を強化した。その結果、ベッドサイド看護時間の増加、分娩数の回復、病棟稼働率の回復に繋がった。詳細の結果を以下に記述する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
正常分娩を例にとると約5日間病床を利用しても、わが国の多くの病院では、出産育児一時金と概ね同額の分娩費用(約50万)を請求する場合が多いため、日帰り手術や診療報酬点数の高い検査等で、短時間に高額の医療収入を見込める医療分野に比して、診療報酬上効率が高いとは言い難い分野となっている。 上記の事象に着目し、周産期分野で実施する看護時間と看護行為を客観的に24時間測定し、算出根拠とする。 【目的】:病院の分娩の約8割が産科混合病棟で行われ、、「助産師は産婦と他科患者を同時に担当する」は約40%に達している。産科と産科以外の全患者に影響は大きいため、患者に実施している、ベッドサイド看護時間に着目する。方法A病院における産科混合病棟で、情報通信技術を用いて約2週間、24時間連続して調査した。スタッフステーション、病棟全域に、ビーコン(stick-n-find)を装着する。ビーコン情報受信機としてスマートフォン(ZenFone Go(ZB551KL))を看護職が携帯し勤務した。改革前の看護師の患者のベッドサイドでの看護時間は、周産期分野における産科混合病棟の看護時間に着目し、24時間看護時間を測定し、助産師を4人増加させ看護人員配置体制を強化した。その結果、ベッドサイド看護時間の増加、分娩数の回復、病棟稼働率の回復に繋がった。改革前年の助産師5人看護師22人計27人から、助産師9人看護師21人計30人の看護体制となった。改革前年病棟稼働率は事故防止のために61.5%に抑え、一日平均分娩数は、0.58であった。ベッドサイド看護時間は産科、産科以外、総合で以下の時間であった。37分、56、5分、46.8分。看護人員増加改革後、病棟稼働率75.9%、分娩数一日平均1.116に増加した。ベッドサイド看護時間は、産科、産科以外、総合で以下の時間であった。34.5分、82.8分、58.6分であった。
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今後の研究の推進方策 |
改革前年:産科、産科以外、総合で以下の看護時間であった。37分、56、5分、46.8分。改革後、34.5分、82.8分、58.6分であった。齋藤らの先行研究で用いた日本看護協会の看護項目から改変した20項目である。機器を用いた看護時間と看護行為の測定以外に、マンツーマンタイムスタディを実施することにより、機械で測定が不可能な、たとえば保健指導内容などを詳細に観察記録した。それらのマクロデータとミクロデータを組み合わせることにより、総合周産期母子医療センターで実施されている看護の量と質を明らかにし、 一般的な診療報酬分野と周産期医療分野の特性を明らかにする。MBA教育における企業研究で蓄積された理論や知識を基に、現在経営的に全く評価されていない周産期医療分野で実施されている母児への看護の質を上げるいくつかの成果を、付加価値の創造と位置付け、経営学的観点から周産期医療・看護を多角的・総合的に分析し、周産期部門を、病院における不採算部門からの脱却を目指す。たとえば、助産師の平均年間賃金と一年間の雇用にかかる総額と増員人数、一方病棟稼働率を61.5%まで落とすと、一ベッド当たりの平均収入は、A病院は、約58800円であるため、病棟稼働率を上場させることができればどれくらいまでの増収が見込めるのか、また分娩数の増加による増収、これらを総合することになり、病院の持ち出しにならず、助産師の増加に繋がることを管理会計分野の教授と分析をしていくことが現在計画されている。 さらに、助産師を増加後の、看護労働環境に関する世界的労働環境尺度NWI-Rでどのように環境が変化したかを分析予定である。どのような手段で病院の中で採算部門として生まれ変わり付加価値を付けていくか、膨大なマクロデータとミクロデータから導く。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍による影響が長引き、調査の終了までの期間が長引いている状態である。病院における調査データを追加中である。2023年3月までに追加した病院における調査データを踏まえた分析を提出予定である。
延長:2023年3月15日
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