研究実績の概要 |
本年度は術後せん妄モデルマウス作成法を確立し、当該モデル動物の脳内モノアミン量と認知機能について評価を行った。本研究で用いたモデル動物は肝臓の一部を切除し術後せん妄を再現するモデルであるため、熟練した実験技術が必須である。本年度は手術技術の向上を行い当該モデルを80%以上の確率で作成ることが出来るようになった。肝臓的術後3日目に認知機能の一つであるSensory motor gating をプレパルスインヒビションテストによって評価した結果、大きな差は見られなかった。次に、前頭葉、海馬及び線条体におて、認知機能に深く関与していると考えられているモノアミン及びそれらの代謝産物濃度濃度を測定した。マウスの肝臓摘出手術後、4日目に脳をサンプリングしドーパミン、セロトニン、ノルアドレナリン及びそれらの代謝産物である、DOPAC, HVA, 5HIAA, MEPGを高速液体クロマトグラフィーによって測定した結果、前頭葉、線条体におしてセロトニンの代謝産物である5HIAA濃度がコントロールマウスにくらべ上昇傾向であることが明らかになった。セロトニンはシナプスから放出されると速やかに代謝酵素によって代謝されることから、5HIAAの上昇は手術後、間もなくセロトニン分泌が過剰になる可能性を示唆している。セロトニンの過剰伝達はせん妄の重要な精神症候の一つである幻覚や不穏に深く関与していること考えられていることから、今回の研究結果は、術後せん妄の病態メカニズム解明の足掛かりになるのではないかと予想される。
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