研究課題
現在、心筋梗塞後の損傷心筋への幹細胞を用いた再生医療は非常に注目されている。特に高齢化の著しい日本における課題として、高齢患者を視野に入れたより低侵襲の治療法を開発することが重要である。本プロジェクトでは、若年齢と高齢マウスを対象として幹細胞を用いた比較検証実験を行うことによって、ヒト、特に高齢者を対象とした臨床応用に向けての重要な示唆を得たいと考えている。昨年、本プロジェクトチームでは、近年、新たな再生医療のリソースとして使用されるようになったマウスの皮質骨から単離した幹細胞の膜表面蛋白を分析し、海外の先行文献と同様に特徴づけられた幹細胞が採取できたことを発表した。中でもCD117(c-kit)は、膜受容体型チロシンキナーゼで、原癌遺伝子であり、幹細胞因子としても知られている。c-kitを介したシグナル伝達は、細胞の生存、増殖、分化に関与するとされている。これらのことからc-kitの詳細な特性を把握することで、幹細胞治療に使用するリソースとしての質や安全性を確認することが可能になると考えた。現在、c-kitをはじめとする細胞の特性評価を継続して実施している段階である。また、生体内環境により近い状態の三次元臓器として組織化できるかを検討したところ、凝集塊を崩壊せず回収することが可能であり、内部壊死することなく組織化が可能なことがわかった。
2: おおむね順調に進展している
心筋再生実験に使用する新たなリソースとなる可能性のある幹細胞の評価を進めている段階である。多面的評価を行っていることから時間を要しているが、これまでいくつかの評価実験を行い、有用なデータを得ている。
皮質骨から得られた候補となる幹細胞の評価を引き続き遂行するとともに、ある程度の評価が終了した段階で、幹細胞移植による効果実験を実施したいと考えている。
本年度において、単離した幹細胞の評価を重点的に実施することに主眼を置き、作業工程の順序を一部、変更した。次年度に、これらの評価を引き続き遂行することが必要と考えたことから、次年度の予定を再検討し予算執行することとした。
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すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件)
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