研究課題/領域番号 |
18K19691
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
上島 通浩 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80281070)
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研究分担者 |
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 特任教授 (10020794)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | トリクロロエチレン / 過敏症症候群 / 機序 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
有機溶剤トリクロロエチレンを使用する労働者に発生する職業病のひとつに、重篤な全身性皮膚・肝障害(過敏症症候群)がある。この疾患は、1)トリクロロエチレン曝露作業への従事開始後、平均1か月で作業者の一部が発症する、2)皮疹は全身に生じ、発熱や好酸球増多を伴い、劇症型肝障害が生じる、3)体内に潜伏感染するヒトヘルペスウイルス6型が再活性化する点で、重症薬疹の1つ薬剤性過敏症症候群と病態が共通する、4)感受性遺伝子としてHLB-B*13:01が非発症作業者より多くみられる、という特徴を有する。 トリクロロエチレンによる過敏症症候群の病態や患者が発生する職場の曝露実態は明らかになってきたにもかかわらず、疾患発生を予防できていない現状がある。したがって、本研究では発症に至る途上の段階を検出できる臨床検査項目を開発し、発症後の早期発見を可能とすることをめざす。 平成30年度は、まず、生体試料解析対象者を選定した。中国広東省のトリクロロエチレン使用職場に就業する非発症作業者で、曝露開始後66日以内の者とした。CYP2E1発現ベクターを作成・動物細胞に導入し、抽出後免疫沈降法で精製したCYP2E1タンパク質を用い、これに対する抗CYP2E1抗体が非発症作業者の血清中に存在するか、ELISA法で測定した。血清中の抗CYP2E1抗体は、曝露開始後の期間が長くなるにつれて高値となり、曝露開始後20日頃以降の作業者ではほぼ一定範囲となりそれ以降は上昇傾向が見られなかった。2月には海外研究協力者を国内招聘し、測定データについての討論と次年度の研究計画に関する研究打ち合わせを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
トリクロロエチレン曝露作業者の生体試料収集および解析対象者の選定に想定より時間を要し、前向き追跡者については血中マーカーおよび尿中代謝物の測定が次年度に持ち越された。
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今後の研究の推進方策 |
次のステップとして、モルモットを用いた感作試験(マキシミゼーションテスト)を実施し、CYP2E1抗体産生機序の解明を行う。得られた実験結果について、海外研究協力者を含めた研究打ち合わせを行い討論する。また、初年度に実施できなかったトリクロロエチレン曝露作業者の生体試料中各種マーカー測定を行う。海外研究協力者を交えて計画の進行管理と研究結果の討論を行い、論文を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の想定より研究対象者の選定が遅れたため、一部の項目の測定が翌年度に持ち越された。また、そのために研究進捗に応じた旅費の執行ができなかった。次年度は研究を加速することにより、前年度に執行できなかった費用として使用する予定としている。
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