研究課題/領域番号 |
18K19691
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
上島 通浩 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (80281070)
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研究分担者 |
那須 民江 中部大学, 生命健康科学部, 客員教授 (10020794)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | トリクロロエチレン / 過敏症症候群 / 機序 / 自己抗体 |
研究実績の概要 |
有機溶剤トリクロロエチレン(TCE)を使用する労働者に発生する職業病のひとつに、重篤な全身性皮膚・肝障害(過敏症症候群)がある。本研究では発症に至る途上の段階を検出できる臨床検査項目を開発し、発症後の早期発見を可能とすることをめざした。 2022年度も中国側の共同研究者との対面での打合せと共同での試料測定を目指したが、新型コロナウイルス感染症流行状況から実施できなかった。その代替としてオンライン会議での打合せによる方針共有を行い、投稿論文への査読コメント対応のための追加実験および再投稿を行った。さらに学会発表およびこれまでの研究についての総説論文の執筆・投稿を行った。 本申請課題の期間中を通じて、以下の成果に関する原著論文を発表した。1)TCEと同代謝物トリクロロエタノールはモルモットにおいて皮膚感作性があり、真皮に好酸球浸潤を伴う紅斑を生じる。また、肝にはリンパ球浸潤を伴う巣状壊死が生じる。これらの変化は代謝物トリクロロ酢酸(TCA)では生じない。2)中国の曝露作業者において、TCE曝露と感受性遺伝子HLA-B*13:01を相互に補正したオッズ比は、尿中TCA 15mg/L以下を参照カテゴリとした時、TCA15-50mg/Lの場合33.4[95%信頼区間4.1-270.8]、50mg/L超では34.0[同5.3-217.1]であった。一方、HLA-B*13:01非保有者に対する保有者のオッズ比は11.0[同2.4-50.7]であった。3)患者、非発症曝露作業者、非曝露作業者においてTCE代謝酵素チトクロム4502E1の血清中自己抗体を測定したところ、抗体量は非発症曝露作業者>患者>非曝露作業者の順であった。1)から3)より、自己抗体測定は本疾患予防のために有用な検査法となる可能性はあるものの、曝露管理が発症予防に最も重要であることが明らかになった。
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備考 |
日本産業衛生学会は2022年度にトリクロロエチレンの許容濃度(生物学的許容値)を改訂し、その提案理由書の中で本研究の成果(Wang et al. 2020)が根拠論文として引用された。
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