研究課題/領域番号 |
18K19692
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
増田 光治 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (10305568)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | がん予防 / 大腸がん / がん抑制遺伝子 / APC遺伝子変異 / 家族性大腸腺腫症 |
研究実績の概要 |
Truncated APCは家族性大腸腺腫症の原因となる変異型APC遺伝子であるが、Truncated APCを有する細胞のみに増殖抑制作用を示す新規合成化合物が報告された(Sci. Transl. Med. 8(361):361ra140, 2016)。この新規合成化合物をポジティブコントロールとして、より安全で安価に実用化できる家族性大腸腺腫症予防効果を持つ天然物、既存薬剤を探索するためのスクリーニング系を構築した。具体的には、参考論文ではソフトアガー法を用いて三次元での細胞増殖抑制を評価しているが、過去のスクリーニング系構築などの経験(挑戦的萌芽研究 課題番号25670321など)から、ソフトアガー法はスクリーニングに用いるには不向きであると予測できた。そのため、まず、通常培地を用いた二次元でのコロニー形成法による細胞増殖抑制を評価するスクリーニング系の構築を試みたところ、細胞株はコロニーを形成したが、ポジティブコントロールである新規合成化合物が無効であった。これを踏まえ、血清や増殖因子の濃度など培地の組成や播種細胞数の検討を行うなど、種々の培養条件や培地組成を変更する基礎的検討を行った。その結果、ポジティブコントロールが正常型APCを有する大腸がん細胞にはほぼ無効で、Truncated APCを有する大腸がん細胞にのみ効果を示す、新たなスクリーニング系が構築できた。 現在、既存の抗炎症薬、脂質代謝経路阻害剤およびフラボノイドなどの天然物などを中心に、スクリーニング作業に着手した段階である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
まず、報告されている新規合成化合物のTruncated APCを有する大腸がん細胞株への作用を検証し、特殊な培養条件下ではあるが、報告通り、正常型APCを有するDLD-1には高濃度でした作用せず、Truncated APCを有するHCT116には低濃度から増殖抑制作用を示す事を再現できた。 その後、その新規合成化合物をポジティブコントロールとして、上記の二つの大腸がん細胞株を用いて、Truncated APCをもつ大腸癌細胞のみに作用して細胞増殖抑制や細胞死を起こさせる天然物、既存薬剤を評価するためのコロニーフォーメンション能を指標としたスクリーニング系構築を試み、それに成功した。 しかし、申請時の計画では初年度中にスクリーニングにも着手し始める予定であったが、研究代表者の健康問題により一時期研究活動が中断したため、スクリーニングの開始が遅れ、結果として研究計画全体に遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
既に準備した天然物や既存薬剤を中心に、それぞれ複数の細胞曝露濃度で、構築したスクリーニング系を用いたスクリーニングを実施する。また、スクリーニングと並行して、見出されたTruncated APCを持つ細胞に対してより強い作用を有するヒット化合物に関しては、構造的な関連化合物に関しても同じスクリーニング系で追加評価すると共に、細胞レベルで分子生物学的手法を用いた作用機序の検証、確認を行う。 更に、量的な確保が可能なヒット化合物は、DLD-1移植XenograftモデルやAPC minマウスモデルを用いて、種々投与経路で投与するなどして、in vivoでの有効性検証と、体重や各臓器への影響など副作用の検討を行い、ヒトへの応用の可能性を検討する。
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