アスピリンの服用が積極的な大腸がん予防法として大きな注目を集めている。さらにアスピリンの大腸がん予防効果の増強と副作用リスクの低減を目指し、潰瘍性大腸炎治療薬であるメサラジンとの併用療法の可能性について基礎的検討を行った。 前年度に引き続き、アスピリンおよび代謝体であるサリチル酸とメサラジンを併用することにより、二種類のヒト大腸がん細胞に対する生長阻害効果が増強するか否かの検討を行った。コロニーフォーメーションアッセイによる、より長期的観察も行った。次に、生長阻害効果が細胞周期の調節によるものかどうかを検証するため、細胞周期解析を行った。さらに、この二剤併用の作用点を調べるため、細胞周期関連分子の発現量の変化を検証した。又、家族性大腸腺腫症のモデル動物であるAPC遺伝子ノックアウトマウスの腸ポリープ部由来細胞を用いて、二剤併用による、生長阻害効果の検証を行った。 アスピリンもしくはサリチル酸に対し、メサラジンを組み合わせることで、単剤投与と比較し、ヒト大腸がん細胞に対して有意な生長阻害効果の増強が認められた。さらに、この併用により大腸がん細胞においてcyclin D1の発現減少と細胞周期のG1期での蓄積が認められたことから、これらの作用が生長阻害効果の増強に寄与していると考えられる。この二剤併用によるcyclin D1の発現減少は、プロテアソーム依存的なタンパク質分解経路を促進している可能性が示唆された。また、サリチル酸とメサラジンの併用は、APC遺伝子ノックアウトマウスの腸ポリープ部由来細胞に対しても、有意な生長阻害効果を認めた。現在、論文投稿準備中である。
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