研究実績の概要 |
突然死の死因の約半数は,心臓・大血管系疾患で占められれている.しかしながら,心臓性突然死例と考えられる事例で形態学的に明らかな変化を伴わない, 心室細動等の「致死性不整脈」で死亡したと推測される事例にしばしば遭遇する.ただし,現時点で致死性不整脈の法医学的診断は除外診断で,推定の域にとどまることから,法医診断学的に致死性不整脈の積極的診断法の確立が望まれている. ケモカインは細胞遊走能を有するサイトカインの総称であり,最近は細胞遊走だけはなく,血管新生や細胞機能に関与することが明らかにされている.ケモカインシステムと急性心臓死との関連性について検討した.法医解剖において,肉眼的・病理組織学的に心筋梗塞と診断された事例と肉眼的・病理組織学的に顕著な変化を認めないが,死因が心臓突然死と診断された事例について,心臓組織を採取して,ケモカインレセプターであるCCR1, CCR2, CCR5, CX3CR1およびXCR1の発現を免疫組織化学的に検索し,心筋梗塞事例と心臓突然死における発現パターンの違いを見出すことで,致死性不整脈診断の一助となるか否かについて鋭意検討中である. さらに,昨年度検討した,死亡時における心筋細胞の日内リズムを検討するために,様々な死因事例から心臓の左心室心筋を採取した.採取した心筋細胞から総RNAを抽出して,2種類の時計遺伝子REVとBmal1の遺伝子発現について,死亡推定時刻と各死因との関連を生の検討についても継続している.前年度同様に,中枢神経障害事例では,心臓におけるREV/Bmal1比は午前中に高く,午後に低くなる傾向が認められた.
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