わが国が2016年に発表した薬剤耐性対策(AMR)アクションプランでは、2020年までに薬剤耐性菌として蔓延傾向にあるカルバペネム系耐性腸内細菌科細菌、特にCarbapenemase producing Enterobacterales(CPE)を中心とした薬剤耐性菌検出率の低減が途上国に求められた。薬剤耐性菌の蔓延を予防するためには、細菌が保有する薬剤耐性遺伝子を網羅的に検出することが必須と言える。現在、一部の医療施設ではPCR法での薬剤耐性遺伝子を市販のキット類で検査しているが、耐性遺伝子領域に変異が存在する場合には検出できないため、変異が存在しても検出できる網羅的なプライマーの開発が必要である。 本研究では、迅速で網羅的に薬剤耐性菌遺伝子をLoop-Mediated Isothermal Amplification (LAMP)法で検出する検査技術の構築を目的としている。 ①薬剤耐性遺伝子領域の塩基配列を比較解析し、変異部分が存在しても増幅可能なプライマーの設計を行い、検討した。②今後、発展途上国での遺伝子検査普及を目指して、高額なLAMP法専用の機器を必要としない策として増幅にヒートブロックを用い、目視判定を行うことで簡易検査の検討を行った。③現状の薬剤感受性試験による表現型を用いた薬剤耐性菌鑑別をより迅速に実践するため、最先端の質量分析装置でのスペクトル波形と組み合わせた薬剤耐性遺伝子の検出を試みた。 今後もCPEの菌株収集を実施し検討を続ける必要があるが、LAMP法は簡易かつ迅速な検出法として有用と考える。また、ヒートブロックを使用してLAMP法を行うことは、LAMP法専用の機器を保有していない施設や海外においても簡易的にLAMP法が行われることが期待できる。
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