研究課題/領域番号 |
18K19699
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堤 明純 北里大学, 医学部, 教授 (10289366)
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研究分担者 |
神林 博史 東北学院大学, 教養学部, 教授 (20344640)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
本庄 かおり 大阪医科大学, 医学部, 教授 (60448032)
可知 悠子 北里大学, 医学部, 講師 (10579337)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 健康格差 / 社会階層 / ライフコース / ストレス / ジェンダー |
研究実績の概要 |
計画通り、当該研究の第一人者による教育講演とシンポジウムを2つの全国学会で実施できた。 労働者の格差研究で有名な英国公務員研究を主導されているEric Brunner教授に、The planet, economic growth and our health: learning from the Japanese experience(第79回日本公衆衛生学会学術総会)、Economic growth and wellbeing:Japan's natural experiment(第36回日本ストレス学会学術総会)という講演をいただいた。前者では、日本のパネルデータを用いて、90年代後半から10数年の経済低迷期に健康感の格差が拡大しなかった事実を基に、気候変動対策と健康対策を同時に進めていける可能性を示された。後者では、英国公務員研究における労働者の解析を含め、健康の社会格差のライフコース検討について教示いただいた。 子どもの貧困研究の第一人者である阿部彩先生には「経済的ストレスと子ども・保護者のウェル・ビーイング」と題した第36回日本ストレス学会学術総会教育講演で、経済的ストレスが子どもとその保護者のウェル・ビーイングに与える影響を供覧いただき、変数の扱い方に留意することで、より有意な知見が期待されることをご教示いただいた。 健康格差のライフコース研究を実践されているNoriko Cable先生に、「小児期における曝露因子影響:ライフコース疫学のアプローチからの検証」と題してシンポジウムに登壇いただき、英国のミレニアム出生コホートを例に、ライフコース疫学のアプローチ方法を教授いただいた。ライフコース研究は、単に小児期の曝露と成人期の健康帰結の関連を見ればよいわけではなく、そのメカニズムの検証が大切であることを、健康の社会決定要因を念頭に置いた実際の解析例を基に教示いただいた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通り、2つの全国レベルの学術総会において、当該分野の第一人者による教育講演およびシンポジウムを実施することができ、ライフコースアプローチなど課題としていた研究方法論について視点を広げることができた。全国1万人規模の公衆衛生学会総会およびウェブで学会内容を配信した日本ストレス学会学術総会において、講演をいただいたことにより、多くの研究者と当該研究課題を共有することができたと思われる。 これまで、当初研究計画に挙げた、わが国の健康格差研究を進めるための社会階層に関する(1)新しい指標の提案、(2)指標の統合の提案、(3)新しい指標の測定法の提案、(4)新しい分析法の提案、(5)実証的研究の企画の目標のうち、(1)~(4)は、ほぼ達成の方向性が見えているが、総括と共同研究の企画立案(研究費確保)までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各担当課題で実証的な解析を進めるとともに、本年度、研究を総括し、新たに社会階層の健康影響を明らかにするための大規模長期追跡調査に関する共同研究の計画を企画立案し、科学研究費助成事業などに応募する。 当初予定の解析は、さらに推し進める。具体的には、堤と可知は、多目的労働者パネルJ-HOPEのデータを利用して、循環器疾患危険因子を含むバイオマーカー指標にセンシティブな社会経済指標を探索する。本庄は国民生活基礎調査のデータを利用して、未婚・既婚女性における社会経済的要因による健康影響をパターン別に分析する。神林は2015SSMデータを用いて、複数の社会経済的要因の指標の統合を図る。小塩は中高年者縦断調査を用いて、社会経済的要因と非感染性疾患(生活習慣病)との関連の分析を深化させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度当初の計画では、社会階層の健康影響研究で著名な英国の国家公務員コホートWhitehall Studyの主任研究者を含む第一人者2名を、University College Londonから招聘し、2020年10月に、日本公衆衛生学会で教育講演、日本ストレス学会で特別講演と研究班員を含むシンポジウムを開催する予定で、経費計画も立案していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、海外からの招聘が不可となった。教育講演およびシンポジウム自体は、オンライン開催に登壇いただくことで実施でき、計上していた謝金もお支払いできたが、英国からの旅費および宿泊費は支出されないことになった。 年度後半での多額の余剰となったため、無理に支出することはせず、翌年度に研究成果のまとめに必要な会議、人件費、論文製作費に使用することを計画している。
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