研究課題/領域番号 |
18K19699
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
堤 明純 北里大学, 医学部, 教授 (10289366)
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研究分担者 |
神林 博史 東北学院大学, 教養学部, 教授 (20344640)
小塩 隆士 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50268132)
本庄 かおり 大阪医科薬科大学, 医学部, 教授 (60448032)
可知 悠子 北里大学, 医学部, 講師 (10579337)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 健康格差 / 社会階層 / ライフコース / ストレス / ジェンダー |
研究実績の概要 |
計画通り、昨年度までに、当該研究の第一人者(3名)による教育講演とシンポジウムを2つの全国学会で実施したところであるが、本年度は、研究代表者が第62回日本心身医学会総会シンポジウム(招待)において、研究成果を発表した。ここでは、社会経済的な要因が健康格差を引き起こすメカニズムには、バイオロジカルな要因のみならず、心理的、行動科学的な要因が媒介するこれまでの知見を整理し、健康格差のアプローチには、心理社会的なアプローチが必要なことを示した。発表内容は、レビュー論文として投稿済みである。 さらに、わが国の労働者に健康格差が発生した経緯についてまとめ英文書籍(一章)において発表した。ここでは、とくに歴史的な視点を取り入れ、戦後間もなくまでは、財閥の影響が残る社会格差があったこと、その後高度経済成長時代までは、国民皆保険の確立、家族的な企業風土や経済格差の縮小が健康格差を低減したが、長時間労働の問題が明らかになったこと。1980年代からバブル経済の時期には、労働者派遣法の導入や、終身雇用など日本的雇用労働形態の変化が、正規対非正規といった格差構造を形成していったこと、バブル経済終焉後は、失業率の上昇や、正規労働者においても管理監督者の負担増などが、自殺率上昇に関わっている可能性など、社会経済的な構造が健康格差と関連してきた経緯を整理した。 また、社会階層を含むリアルデータを用いて労働者の心の健康をシミュレーションするモデルを開発するための大型共同研究を申請した(科研費)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画通り、2つの全国レベルの学術総会において、当該分野の第一人者による教育講演およびシンポジウムを実施することができ、ライフコースアプローチなど課題としていた研究方法論について視点を広げることができた。全国1万人規模の公衆衛生学会総会およびウェブで学会内容を配信した日本ストレス学会学術総会において、講演をいただけた。本年度は、さらに、上記第一人者らが編集した関連の書籍(一章)を刊行することができ、多くの研究者と当該研究課題を共有することができたと思われる。 これまで、当初研究計画に挙げた、わが国の健康格差研究を進めるための社会階層に関する(1)新しい指標の提案、(2)指標の統合の提案、(3)新しい指標の測定法の提案、(4)新しい分析法の提案、(5)実証的研究の企画の目標のうち、(1)~(4)は、ほぼ達成の方向性が見えている。本年度、社会階層の変数を取り入れて心の健康をシミュレーションするモデルを開発する大型共同研究を申請するも不採択となったため、総括と共同研究の企画立案(研究費確保)までには至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、各担当課題で実証的な解析を進めるとともに、本年度、研究を総括し、社会階層の健康影響を明らかにするために必要な測定法・分析法を推し進めるための大規模共同研究の企画立案に再チャレンジする。 当初予定の解析は、さらに推し進める。具体的には、堤と可知は、多目的労働者パネルJ-HOPEのデータを利用して、循環器疾患危険因子を含むバイオマーカー指標に鋭敏な社会経済指標を探索する。本庄は国民生活基礎調査のデータを利用して、未婚・既婚女性における社会経済的要因による健康影響をパターン別に分析する。神林は2015SSMデータを用いて、複数の社会経済的要因の指標の統合を図る。小塩は中高年者縦断調査を用いて、社会経済的要因と非感染性疾患(生活習慣病)との関連の分析を深化させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果のまとめに必要な会議、人件費、論文製作費に使用することを計画していたが、コロナウイルス感染症の影響で、会議費用が大きく削減された。残額については、本年度まとめにあたって、論文掲載費に支出することを計画している
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