研究課題
ベトナムにおけるダイオキシン高暴露地域であるビエンホア基地周辺地区に居住する男性の内、以前我々の研究に参加して血中ダイオキシン濃度とホルモンレベルの把握されている男性33名を対象として脳MRIをシーメンス社3TMRI装置(TrioTim)を用いて、3D-T1強調画像とDTI画像を撮影した。この撮影データをDIXCOMデータとしてCDに保存し、日本に持ち帰り、上丘、扁桃体、脳幹、海馬、視床、大脳の白質等の体積をVBM (Voxel-based morphometry)法で解析することを、BioView社に依頼し、3D-T1強調画像について、脳の標準化を行い、VBMベースの解析を行うための前処理を行った。そのデータをMatlab上で作動する SPM12統計パッケージの中の相関解析を用いて、対象者の血中ダイオキシン濃度との関連性を解析した。なお、データ解析には血中ダイオキシン濃度を測り得た32名について行った。その結果、左脳の紡錘状回、内側側頭極、海馬傍回は、4塩化ダイオキシン濃度と有意の負の相関があり、内側側頭極は総塩化ダイオキシン毒性当量とも負の相関があった。また、右脳の中前頭回と中心後回、左脳の小脳は6塩化ダイオキシン濃度と有意な正の相関が認められた。これらの結果から、ダイオキシン高暴露と脳の領域別体積に影響を及ぼしている可能性が示唆された。この結果は、日本衛生学会において発表した。また、DTI法により撮影した後、12の神経束について、線維結合の強さを反映すると考えられている組織特性値(FA値)と平均拡散強度(MD値)を、BioView社で作成したADC(apparent diffusion coefficient map)を基に、トラクトグラフィー解析ソフトであるTravkVisを用いて算出し、現在ダイオキシン暴露との関連性についての解析を行っている。
3: やや遅れている
新型コロナ感染症拡大のため、現地でのMRI測定が行えない。このため、現在調査できた32名についてのデータ解析に留まっている。
令和3年度に繰り越し申請を行っており、期間を1年延長して、調査を継続する予定である。
本年度に計画していたベトナムにおける頭部MRI追加検査が、新型コロナ流行拡大のため実施できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は、これをベトナムにおける頭部MRI検査およびその他の健診費用として使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (1件)
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