研究課題
マウスへのエタノール慢性経口投与により結腸組織への酸化ストレスが誘導された.炎症レベルは増大し,これは炎症抑制に関与する制御性T細胞レベルの低下を伴っていた.エタノール慢性経口投与によるマウス結腸の腸内細菌叢構造変化を調べたところ,炎症性腸疾患で観察される菌叢構造変化と類似した変化が観察された.これは慢性エタノール摂取による結腸環境変化が、酸化ストレスの持続的産生に大きく関与することを示唆している.また,エタノール慢性経口投与はマウス結腸における終末糖化産物およびそれらの受容体レベルの上昇を誘導させた.この事実は,エタノール慢性経口投与によってもたらされる大腸の慢性炎症と発がん誘導において,結腸組織中の酸化ストレス増大やRAGEを介した炎症機序が少なくとも部分的には寄与しうることを示唆している.現在,エタノール慢性経口投与によりマウス糞便中のSCFAがどのように変化するかを追跡中であるが,これまでに得られた本研究の成果の学術的意義や社会的意義は次のように述べることができる.習慣的な多量飲酒が大腸がん発症リスクを増大させることは疫学的に立証されているが,その具体的なメカニズムについては未だ不明な点が多い.本研究において,長期アルコール摂取が結腸内にて酸化ストレス増加を誘導し,腸内細菌叢構造を変化させること,そしてそこには結腸組織への終末糖化産物蓄積の寄与も関わっている可能性が示唆された.このことは,大腸で抗酸化作用を発揮しうる食品機能分子を習慣的に摂取することより,飲酒習慣に伴うによる慢性大腸炎やがん発症予防がなされる可能性を示唆しており,このことを視野に入れた次の研究展開が期待される.
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PLoS One
巻: 16 ページ: 1-20
10.1371/journal.pone.0246580