本研究課題では、最近我々が見出した運動筋ニッチ(exercise-governed favorable immuno-metabolic niche)と、その現場における動員好中球、血管内皮細胞、そして運動筋線維からなる異種細胞間の機能連携を2光子顕微鏡を用いて生体イメージング解析することを目的としている。昨年度までに、GLUT4-EGFP-tgマウス体内において、ナノ蛍光粒子(Qdot)により好中球を特異染色し、電気パルス刺激(EPS)誘導性の筋収縮運動を負荷することにより、運動骨格筋組織内の生体イメージング観察を可能にした。最終年度となるR1年度は、この生体イメージング系を駆使することにより、活動筋組織中への好中球の動員メカニズムとその生理的重要性、特に運動依存性糖代謝亢進(GLUT4膜移行亢進メカニズム)を調べた。薬理学的な生理実験により筋運動依存性の好中球動員には少なくとも2種類のマイオカイン(CXCL1とCX3CL1/fractalkine)が関与することを見出し、特にCX3CL1受容体(CX3CR1)アンタゴニスト投与は、運動依存性に惹起される好中球動員、マイオカイン発現亢進、筋糖取込亢進とGLUT4膜移行を抑制することを明らかにした。重要なことに、この運動筋ニッチの生体イメージング解析で発見した現象は、マウス個体レベルでの運動実験モデル(咬筋咀嚼運動モデル・走行運動モデル)においても同様に認められることを確認した。従って、本研究により新たに開発した「運動筋ニッチにおける免疫代謝微小環境の生体イメージング解析システム」は、活動中の骨格筋内で時々刻々と惹起される異種細胞間の機能連携とその生理的重要性を理解する上で有用で優れた実験系である。本研究成果を用いて活動中の骨格筋内微小環境を詳細に可視化解析することにより、運動筋ニッチの生理的重要性がさらに理解できるだけなく、2型糖尿病などの各種病態におけるその機能不全などを明らかにすることが極めて重要であると考えられる。
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