単純糖質(単糖類、二糖類)やアルコールを経口摂取した際に肝臓から分泌されて血中濃度が高まるFGF21(ホルモン)が、脳のオキシトシン神経を活性化させることにより、飲酒欲求を抑制するという仮説を検証するために、以下の実験を行った。 1.野生型マウスを高ショ糖食飼育を行うことにより、アルコール嗜好性が低下することを確認した。また、各個体において、アルコール嗜好性と血中FGF21濃度は、負の相関関係を認めた。 2.オキシトシン神経特異的FGF21受容体欠損マウスを作出し、アルコール嗜好性を評価した、4% および 8%のアルコールに対する嗜好性は有意に上昇し、16 % アルコールに対する嗜好性は上昇傾向を認めた。つまり、飲酒に伴い、「飲酒欲求が満たされた」と感じるためには、飲酒に伴い肝臓から分泌されるFGF21が、オキシトシン神経に作用すること(オキシトシン神経に対するFGF21入力)が必要であることが示唆された。 3.肝臓からのFGF21分泌を刺激する物質を同定するために、肝細胞の初代培養系を確立した。そして、各種の希少糖(46種類)の添加実験を行い、グルコースやフルクトースなどよりも顕著にFGF21分泌を刺激する希少糖を3種類同定し、特許出願を行った。これらの希少糖によるFGF21分泌刺激には、用量依存性があることも、肝臓初代培養系を用いて確認した。 4.同定した希少糖をマウスに経口投与することにより、マウスの血中FGF21濃度を高まることを確認した。
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