研究課題/領域番号 |
18K19730
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
稲田 全規 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80401454)
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研究分担者 |
平田 美智子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40544060)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | スポーツ健康科学 / キサントフィル / 健康科学 / 骨・歯 / 代謝 |
研究実績の概要 |
本課題の目的は、骨と歯を同時に守るキサントフィルの機能解明を行い、新しい概念の機能性食品開発への橋渡し研究を行うことである。骨粗鬆症と歯周病に関わる共通のメカニズムを解明し、キサントフィルの骨保護作用を活用した“骨と歯の健康維持”に有効な機能性食品の開発基盤を確立する。 平成30年度は骨粗鬆症発症における歯周病の発症機序の解析を行った。野生型マウスに卵巣摘出を施し、性ホルモン欠乏の骨粗鬆症発症において歯周病モデルマウスを構築し、両疾患の発症メカニズム解析を進めた。骨粗鬆症の評価では大腿骨、歯周病では歯槽骨を用い、3次元CT による骨密度測定、骨形態計測を実施した。測定した骨パラメーターの解析を進めた。 骨粗鬆症マウスでは四肢を形成する長管骨、脊椎骨の骨吸収が亢進した、さらに、新た発見として、骨粗鬆症マウスでは膜性緻密骨である歯槽骨骨量が低下することが明らかとなった。これら新発見より、性ホルモン欠乏に起因する骨吸収は、長管骨の海綿骨を主とした破壊に加えて、緻密骨である歯槽骨の骨吸収にも関与し、すでに骨破壊が進展している歯槽骨に歯周疾患で誘発された炎症性骨吸収が加わることを意味しており、相互が骨破壊のリスクとなることが明らかとなった。 さらに、キサントフィルを用いた骨代謝調節作用のメカニズムをIn vitro細胞系を用い、骨吸収と骨形成に着目して解析した。破骨細胞の形成系では、骨芽細胞における破骨細胞形成因子(RANKL)や、それを制御する転写因子であるNfatc1の発現は抑制された。また、骨芽細胞による骨形成を解析したところ、骨形成因子についてはOSX、オステオカルシン、コラーゲンの産生変動が上昇した。これら検討により、キサントフィル類は骨吸収を抑制すると共に骨形成を促進して、骨量を増大させることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
H30年度の解析では、骨粗鬆症における歯周疾患の発症機構の研究を進め、炎症と歯周病の関係や歯周病と骨粗鬆症の相互リスクを検討した。マウスを用いた骨粗鬆症における歯周病モデル系を確立した。これらモデルの解析の結果、骨粗鬆症マウスでは四肢を形成する長管骨や脊椎骨の骨吸収が亢進し、さらに、膜性緻密骨である歯槽骨骨量が低下することを明らかとした。 これら新発見により、性ホルモン欠乏に起因する骨吸収は、海綿骨を主とする長管骨と緻密骨である歯槽骨で同様に起こり、すでに骨破壊が進展している歯槽骨に炎症性骨吸収が加わることにより増悪することが明らかとなった。これら発見は解析当初では不明であったが、H30年度の解析実施により、歯周病が骨粗鬆症におけるリスク因子であることが具体的に証明された一例となった。 さらに、これらを改善する因子として、キサントフィルを用いた骨代謝調節作用のメカニズムを行った結果、キサントフィル類は骨吸収を抑制すると共に骨形成を促進して、骨量を増大させることが明らかとなった。これらは、骨芽細胞における破骨細胞形成因子(RANKL)や、それを制御する転写因子であるNfatc1の発現を抑制させ、骨芽細胞による骨形成ではOSX、オステオカルシン、コラーゲンの産生が上昇した。 In vitro解析におけるキサントフィルの骨吸収抑制効果及び骨形成促進効果の発見はH31年度のキサントフィルによる骨粗鬆症と歯周病の改善効果検証に確実な展開が可能となった。さらに、骨粗鬆症モデルマウスを用いた検討では、長管骨と歯槽骨の骨吸収が同様の調節機構により破壊が促進することから、キサントフィルによる効果検証が必須である。これらの成果は次年度のH31年度の本課題を円滑に進める基盤として必須であり、今年度の研究進展は前倒しの課題実施を可能とする。これら理由により、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
H31年度は、キサントフィルによる骨粗鬆症と歯周病の改善効果検証を試みる。骨粗鬆症/歯周病併発モデルマウスに、キサントフィルを摂取させ、骨粗鬆症と歯周病の併発へのキサントフィルの有効性を立証する。評価は歯槽骨、大腿骨を用い、マイクロCT3次元解析、骨形態計測を実施する。以上より、雌雄両性におけるキサントフィルの歯と骨へ与える影響を詳細に解析する。 In vitro実験では、作用メカニズムの解析として、抗酸化関連遺伝子の解析を行う。これら実験の実施により、両疾患を併発する中高年齢者における、歯周病と骨粗鬆症の共通点と関連を分子レベルで解明し、食品由来天然因子であるキサントフィルの効能を立証して、両疾患の予防・改善法の開発につなげる。さらに、これらキサントフィルの骨保護作用を活用して、“歯と骨の健康維持”に有用な機能性食品の開発へとつなげる。 最終的には研究課題を実施する、歯科医師、医師、薬剤師の連携により、近未来にヒト介入試験を実施して機能性表示食品として開発する方針でその基盤データを確立し、キサントフィルを活用した歯と骨の健康を守る機能性食品のプロトタイプの開発試験につなげる。
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