研究課題/領域番号 |
18K19733
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
後藤 直宏 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (60323854)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | トリアシルグリセロール / 安定同位体 / ラベル化 / 重水素 / 非破壊 |
研究実績の概要 |
我々が摂取する油脂の90%以上はトリアシルグリセロール(TAG)と呼ばれる脂質クラスであり、グリセリン骨格に脂肪酸が3分子エステル結合をした構造を有している。各種油脂の特徴を表す指標として、油脂を構成する脂肪酸の分布が使用されることが多い。ところが、油脂の違いは体内における各種脂肪酸の分布や代謝へ強く影響すると考えるが、油脂の種類の違いが機能性脂肪酸の体内分布へどのように影響を与えるか直接観察する手法は存在しない。そこで、TAGを構成する脂肪酸を加水分解せずにそのまま脂肪酸中の2つのα位水素を重水素置換することが可能となれば、脂肪酸の分子量が2増えているため、LC-MS/MSなどの質量分析装置で測定することにより、生体内に既に存在する同種脂肪酸と区別して分析が可能となる。そこで平成30年度は、天然油脂中TAGを非破壊で重水素ラベル化する合成法の開発を目標に研究を行った。 平成30年度に実施した主な実験結果を以下に記す。(Dは重水素)) ①tert -BuODで交換反応を行った結果→重水素の交換反応が質量分析計で確認されず失敗。②CH3ODで交換反応を行った結果→重水素の交換反応が質量分析計で確認されず失敗。③tert -BuOK+BF3+tert -BuODで交換反応を行った結果→重水素の交換反応が質量分析計で確認されず失敗。④CH3ONa+CH3ODで交換反応を行った結果→薄層クロマトグラフィーで加水分解が確認されたため失敗。⑤BF3+CH3ODで交換反応を行った結果→薄層クロマトグラフィーで加水分解が確認されたため失敗。⑥D2SO4+CH3ODで交換反応を行った結果→重水素の交換反応が質量分析計で確認されず失敗。 以上のように、交換反応が起こらない原因としては使用した触媒の塩基もしくは酸強度が引き抜くα水素と会わないことが原因と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
多くの合成条件を検討しているが、α位水素の交換版のが進まない。交換反応が起こらない原因としては使用した触媒の塩基もしくは酸強度が引き抜くα水素と会わないことが原因と考えられる。また加水分解も起こっていることから、反応系内の水分除去が完全ではないことも原因と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、①新たな塩基性および賛成触媒の検討、②反応系内の水分の徹底除去、を中心に研究を進める。
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