皮膚の色(スキンカラーは)主に表皮のメラノサイトで産生されるメラニン粒子の量やサイズによる。先行研究では、スキンカラーとインスリン抵抗性の関連が認められたことから、メラニンの生成・代謝は、糖尿病、肥満、メタボリックシンドローム、乳がん等の生活習慣病形成に関与する可能性があると考えた。そこでスキンカラーとこれらの疾患の関連を疫学研究に展開できるよう、まず自己申告用スキンカラースケールを作成、その妥当性を評価した。対象者101名に6段階の色からなるスケールより、日光暴露の影響を受ける手背と本来の肌の色を反映する上腕内側部について、それぞれ該当するカラーを選んでもらい、器機メグザメータによる測定値、メラニン指数との相関係数を算出した。女性では上腕内側で 0.50、手背0.45と良好な相関を示したが、男性では手背においてのみ(r=0.57)良好であった。 また、女性792名において生活習慣病のバイオマーカーとスキンカラーの関連を評価した。上腕内側部のメラニン指数が高いとインスリン値、インスリン抵抗性、血中総コレステロール、中性脂肪、収縮期血圧、拡張期血圧が低かった。閉経前女性309名においてメラニン指数とレプチン値に負の関連性が認められたが、性ホルモン値との関連はなかった。 概して対象者数の多い疫学的研究には、このスケールによるスキンカラーの自己申告は有用と示されたが、男性を対象とした場合は注意を要する。また、生活習慣病のバイオマーカーの中でも特に糖尿病、メタボリックシンドローム、循環器疾患に関わるバイオマーカーがメラニン指数と関連を示したことから、スキンカラーがこれらの疾患に関与する可能性が認められた。この結果は、今後の疾患自体をアウトカムとした疫学研究、臨床研究への展開を促すものである。
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