研究課題
骨格筋を構成する主たる細胞は筋線維と呼ばれる多核の巨大な細胞であり,我々の体の30-40%をしめる細胞である.筋線維は代謝経路や収縮装置(筋原繊維)を構成するミオシン重鎖により,速筋タイプと遅筋タイプに分類されている.速筋タイプは疲労度は高いが瞬発力発揮にすぐれている(短距離ランナー型).一方,遅筋タイプは瞬発力発揮には不向きだが耐疲労性を有している(マラソンランナー型).速筋・遅筋の比率は全部位の骨格筋で同一ではなく遅筋が多いヒラメ筋(Soleus muscle)や速筋が多い長趾伸筋(EDL muscle) など,部位によってその比率は異なる.また,様々な筋疾患特異的に遅筋が速筋に変化したり(slow-to-fast) 逆に速筋が遅筋に変化したりする(fast-to-slow).このように筋線維タイプの比率は内的・外的影響を受けると考えられている.また,発生学的には全ての筋線維は速筋タイプミオシン重鎖(Myh1)を発現し,その後速筋・遅筋タイプに分かれるとの報告が存在するが,詳細は不明である.申請者は,遅筋タイプの筋線維特異的に認識するモノクローナル抗体3A11-3 を樹立した.この抗体は,成体での遅筋線維(Soleus)よりも新生仔時期(Neonatal Hind limb)の遅筋線維で反応性が強い結果が得られている.そこで,昨年に引き続き,本年度もヌードマウスに3A11-3 ハイブリドーマを投与することで3A11-3 抗体含有腹水を大量に採取した.また生後7日前後の骨格筋組織を胎仔より採取し,3A11-3が認識する抗原として用いた.連携研究者にサンプルの解析を依頼し,抗原の同定を試みたが,本年度もはっきりとした分子を特定することはできなかった.一方で,申請者は,筋線維タイプの変化が見られる足底筋を用意して,本3A11-3の特異性に関する検討の準備を進めた.
4: 遅れている
抗体が認識する抗原を同定し,機能評価等を行う計画にしていたが,再現性のある結果の取得に至っていないため,進捗状況としては遅れている.そのために,研究期間の1年間の延長申請を行った.
Dodecyl-Β-D-maaotosite (DDM)で組織細胞を溶解したサンプルにおいて,新生仔筋組織(+)のサンプルに分子量は約150-160kDaの強いシグナルのバンドが検出されたが,この再現性のあるこのバンドの検出ができていないために,別の方法の検討を行う.また,抗体精製に関しては,GE社のHiTrap Purification HP Columにより精製を行なっているが,この点に関しては検討する.fast-slow への変化が起こる足底筋の解析も進め,運動と筋線維タイプにおける新しい知見の取得も目指す.
計画通りの抗原決定が進んでいないため,本年でもその実験に挑戦する費用として使用させて頂く.
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Cell Rep
巻: 19 ページ: 2154-63
10.1016/j.celrep.2019.10.057
eLife
巻: 8 ページ: pii: e48284
10.7554/eLife.48284.