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2019 年度 実施状況報告書

IgEに対して高親和性レクチン分泌を惹起する食品因子による新規アレルギー抑制効果

研究課題

研究課題/領域番号 18K19741
研究機関神戸大学

研究代表者

水野 雅史  神戸大学, 農学研究科, 教授 (00212233)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワードフコイダン / アレルギー抑制 / 陰イオン交換クロマトグラフィー
研究実績の概要

加熱処理温度がフコイダンに与える影響を調べるため、粗フコイダン抽出物を異なる温度(4, 10, 30, 50度)で10分間熱処理後、陰イオン交換クロマトグラフィーに供した。その結果、熱処理温度の上昇に伴い非吸着画分であるFraction1(以下F1画分)の減少と1.0 M NaClで溶出されるFraction3の増加が認められた。更に、50℃, 10分間処理した場合、F1画分はほとんど消失していた。熱処理による変化がフコイダンの抗アレルギー効果に与える影響をPCA反応試験によって評価したところ、30℃以下で熱処理した各粗フコイダン投与群では耳介浮腫が抑制されていたのに対し、50℃で処理した粗フコイダン投与群では耳介浮腫の抑制は見られなかった。また、粗フコイダンを陰イオン交換クロマトグラフィーで分画して得られた3画分を分取し、PCA反応試験を行った結果F1画分にのみ耳介浮腫抑制が認められた。以上の結果より、マコンブ由来粗フコイダン中に含まれるF1画分が抗アレルギー活性を示す画分であり、50℃, 10分間の加熱によるF1画分の消失が抗アレルギー効果消失の原因であることが明らかとなった。次に、加熱処理による活性画分の変化を調べるため、50℃で30分間もしくは60分間加熱処理したF1画分を同様の方法で分画した。その結果、3つの画分が得られたが、そのクロマトグラムは加熱時間によって変化した。処理時間が30分までは、非吸着画分は消失していったが、60分では再び非吸着画分が増加した。以上のことより、短時間(50℃以上、10分間)の加熱処理は粗フコイダン画分中の活性画分を分解し、抗アレルギー効果を消失させることから、生理活性を保つためには昆布を調理する際の加熱処理温度が重要であることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

今年度計画していた感作後におけるフコイダンの抗アレルギー効果については、アレルゲンおよびフコイダンの投与時期を変化させることで、フコイダンはアレルギー発症後に摂取した場合でも抑制効果があることを確認することができた。また、昆布中に含まれる多糖類をToyopearl DEAE-650を用いた陰イオン交換クロマトグラフィーに供することで、抗アレルギー活性を有する画分を分画・精製することが可能になった。さらにその画分を50℃で10分加熱すると生理活性が消失することも明らかとなった。そこでこの活性を有する画分とその熱処理画分の構造的差異を明らかにすることで、当初研究計画に挙げていてフコイダン受容体について検討できるのではないかと考えている。

今後の研究の推進方策

先ず、もう一つの実施項目であるフコイダン投与によるガレクチン9分泌が炎症性腸疾患にも効果があるかどうかをDSS誘導腸炎モデルマウスを用いて明らかにする。具体的な炎症誘導方法は既に確立しているので、フコイダンの投与量や投与時期を検討することで、効果を明確にできると考えている。一方、アレルギー抑制に関してはフコイダン受容体を探索するため、活性画分を単離精製できる系を構築したので、その精製物とその熱分化物の構造的差異を明らかにすることで、フコイダン受容体の探索に利用できないかと考えている。さらに当初予定していたT84株培養細胞よりもガレクチン9産生が誘導されやすい細胞株としてHT-29株を用いて、ガレクチン9分泌における差を確認すると共に自然免疫に関与しているToll-like receptors (TLRs)の中和抗体の前処理による分泌の有無から受容体の同定を試みる予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究実績の概要でも述べたが、フコイダンを認識する受容体を探索するために計画していたT84細胞はガレクチン9分泌量が少ないためウェスタンブロットでの検出が難しいことが分かった。そこで、より分泌量の多い培養細胞であるHT-29細胞を使うことで検出出来ることが判明した。従ってこの細胞を使ってフコイダンを認識する受容体を解明するため、今年度使用額の一部を次年度に繰り越すことにした。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Oral administration of fucoidan can exert anti-allergic activity after allergen sensitization by enhancement of galectin-9 secretion in blood2020

    • 著者名/発表者名
      Mizuno, M., Sakaguchi, K. and Sakane, I.
    • 雑誌名

      Biomolecules

      巻: 10 ページ: -

    • DOI

      10.3390/biom10020258

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Influence of temperature on anti-allergic activity of fucoidan extracted from Saccharina japonica2019

    • 著者名/発表者名
      Morita, A., Tanino, Y., Ojima, T. and Mizuno, M.
    • 雑誌名

      Food Science and Technology Research

      巻: 25 ページ: 607-611

    • DOI

      10.3136/fstr.25.607

    • 査読あり
  • [学会発表] 加熱処理によるフコイダン分解物の抗アレルギー効果への影響2020

    • 著者名/発表者名
      森田温子、水野雅史
    • 学会等名
      日本農芸化学会2020年度大会
  • [学会発表] 276.Structural change of fucoidan extracted from Saccharina japonica by heat treatment and its anti-allergy property2019

    • 著者名/発表者名
      Masashi Mizuno, Atsuko Morita, Ken-ichiro Minato
    • 学会等名
      30th Annual Conference of the Australasian Society of Clinical Immunology and Allergy
    • 国際学会
  • [学会発表] フコイダンが有する抗アレルギー効果の安定性について2019

    • 著者名/発表者名
      森田温子、水野雅史
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会平成31年度大会

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公開日: 2021-01-27  

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