研究課題/領域番号 |
18K19742
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
藤野 英己 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (20278998)
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研究分担者 |
近藤 浩代 名古屋女子大学, 健康科学部, 准教授 (50333183)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | パルス磁気 / 慢性心不全 / 骨格筋 / エネルギー代謝 / 筋伸長 |
研究実績の概要 |
本研究は慢性心不全で惹起される骨格筋の機能低下に対するパルス磁気刺激の効果を検証することを目的にしている。磁気刺激は従来の電気刺激に比較して非疼痛性や照射の簡易性等の利点があり、先ずヒトを対象とした疼痛レベルを検証した。超音波エコーで筋収縮を確認しなが、20%MVC(随意最大収縮)に相当する刺激強度での疼痛の評価を実施した。パルス磁気刺激では疼痛は感じられるが、低周波や中周波電気刺激に比較して、疼痛の程度は有意に低くなった。次に慢性心不全モデル動物に対して磁気刺激の効果を検証した。モノクロタリン誘導性心不全モデル動物では心臓や心室の重量は著しく増加し、心室肥大も観察され、心不全を呈した。また、磁気の照射は心臓の増悪や改善に関与しなかった。心不全に伴い下肢ヒラメ筋量は有意に低下し、下肢への磁気刺激は下肢筋量の低下を抑制できる結果を得た。さらにパルス磁気刺激は筋線維の速筋化を抑制し、TCAサイクルに関与するクエン酸シンターゼ、コハク酸脱水素酵素活性の低下を減衰させた。また、ミトコンドリア新生に関与するPGC-1αの低下も抑制し、心不全で増加した過酸化脂質を低減した。これらの結果からパルス磁気刺激は骨格筋の代謝を改善でき、慢性心不全による骨格筋の機能低下を改善させることが明らかになった。一方、磁気刺激に筋伸長装置を付加した治療では、骨格筋内に損傷した像が確認された。また,磁気刺激による筋収縮に伸長刺激を加えることで酸化ストレスマーカである骨格筋中のチオバルビツール酸反応性物質の増加や筋線維横断面積の低下が観察された。筋伸長速度の影響により過負荷が生じているものと考えられるため、伸長速度を考慮する必要があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナ感染症による緊急事態宣言等の影響により、研究が実施出来なかった時期があり、動物への介入や分析が中断された。このために研究に遅れが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
慢性心不全モデルにより筋萎縮が確認され、パルス磁気刺激により筋萎縮を予防できた。また、エネルギー代謝に関連する代謝活性に対して高い効果が観察された。この特徴が磁気自体の効果を検証するために培養筋細胞を使用した代謝解析等を実施する計画である。一方、磁気刺激に筋伸長を付加した方法では、予想していなかった骨格筋内の損傷が確認された。骨格筋損傷が発生する要因も探索する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症による緊急事態宣言等の影響により、研究が実施出来なかった時期があり、動物への介入や分析が中断されたため。主に解析等の試薬に使用する計画である。
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