研究課題
本研究は慢性心不全で惹起される骨格筋の機能低下に対するパルス磁気刺激の効果を検証することを目的にしている。ヒトを対象に磁気刺激での疼痛の評価を実施した。超音波エコーで筋収縮を確認しながら、20%随意最大収縮に相当する刺激強度での疼痛の評価を実施した結果、疼痛は感じられるが、低周波や中周波電気刺激に比較して、疼痛(VAS)の程度は有意に低くなった。従来の電気刺激に比較して照射による疼痛の軽減に利点があることが明らかになった。次に慢性心不全モデル動物の骨格筋に対して磁気刺激の効果を検証した。モノクロタリン誘導性心不全モデル動物では心臓や心室の重量は著しく増加し、心室肥大が観察され、心不全を呈した。磁気照射で心不全の増悪は観察されなかった。心不全に伴い下肢ヒラメ筋量は有意に低下し、下肢への磁気刺激は下肢筋量の低下を抑制できる結果を得た。さらにパルス磁気刺激は筋線維の速筋化を抑制し、TCAサイクルに関与するクエン酸シンターゼ、コハク酸脱水素酵素活性の低下を減衰させた。また、ミトコンドリア新生に関与するPGC-1αの低下も抑制し、心不全で増加した過酸化脂質を低減した。これらの結果からパルス磁気刺激は骨格筋の代謝を改善でき、慢性心不全による骨格筋の機能低下を改善させることが明らかになった。次に磁気刺激に筋伸長装置を付加した装置を開発した。磁気刺激に筋伸長装置を付加した治療では、骨格筋線維に損傷した像が確認され、酸化ストレスマーカである骨格筋中のチオバルビツール酸反応性物質の増加や筋線維横断面積の低下が観察された。筋伸長速度による影響を受けるものと考えられるが、1秒に30度の角速度による筋伸長は過負荷が生じているものと考えられるため、実用化するためには伸長速度を考慮する必要があることが示唆された。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (15件) (うち国際共著 1件、 査読あり 15件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 4件)
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