研究課題/領域番号 |
18K19743
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
浮穴 和義 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (10304370)
|
研究分担者 |
岩越 栄子 広島大学, 総合科学研究科, 研究員 (50311296)
長谷川 博 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (70314713)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | 視床下部 / サルコペニア / 肥満 / 筋肉 |
研究実績の概要 |
研究代表者は、鳥類の視床下部から新規分泌性小タンパク質であるNPGLを発見している。ラットやマウスを用いたNPGLの脳室内投与や前駆体遺伝子の過剰発現の解析から、摂食行動の亢進や白色脂肪組織における脂肪蓄積が生じることを明らかにしている。一方、体重の増加は顕著ではなく、その原因を調べたところ、骨長や骨格筋の減少が引き起こされていることがわかった。体重減少を伴わず、脂肪が増え、筋肉が減少することが知られているサルコペニア肥満が近年注目されている。したがって、本研究課題では、NPGLの生理作用を有効に活用することで、サルコペニア肥満様状態を呈するモデル動物の産出が可能であると考えた。つまり、モデル動物の産出とその表現型解析から、病態に至る過程を詳細に明らかにできると考え、研究を進めている。今年度は、ゲノム編集技術を使ったNPGL遺伝子改変動物の作製に取り掛かった。各ステップに時間が要するため、その間、正常ラットを用い解析を進めた。ラットにNPGL前駆体遺伝子を過剰発現し、脂肪蓄積と筋肉重量の減少が生じることを再度確認し、その際の脳下垂体ホルモンレベル及び血中ホルモンレベルを解析した。NPGLは成長ホルモンの合成・分泌の抑制を介して、脂肪分解の阻害、骨と筋肉の成長を抑制していると仮説を立てた。しかしながら、脳下垂体中の成長ホルモンmRNA量及び血中成長ホルモンレベル、さらに、インスリン様成長因子(IGF-1)の血中レベルにも変化は認められなかった。本研究により、NPGLの脂肪蓄積・骨と筋肉の成長抑制作用は、成長ホルモンの作用とは独立して生じていることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サルコペニア肥満様の病態モデル動物の産出のため、ゲノム編集技術により遺伝子改変動物の着手を行い、次年度以降の病態解析へ向けた研究を進めることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
ゲノム編集技術により作製した遺伝子改変動物は、NPGL遺伝子の下流にCre配列を組み込んだものであり、loxP系による細胞及び時期特異的なNPGL産生細胞の活性化・不活性化が可能である。そのため、DREADDシステムを用いたNPGL産生細胞の活性化・不活性化が可能なレセプターを発現させ、リガンド投与を行うことで表現型の解析が可能となる。今後はこのDREADDシステムを用いた解析を積極的に進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の実験計画よりも効率的に研究を進めることができたため、次年度使用額が生じた。ただし、次年度はより多くの実験試薬・消耗品を必要としているため、次年度使用額も含め、効率的な予算執行をしていきたい。
|