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2018 年度 実施状況報告書

アミラーゼに替わるマイクロRNAによる本質的なストレスを数値化する診断法を探る

研究課題

研究課題/領域番号 18K19757
研究機関明海大学

研究代表者

栗原 琴二  明海大学, 歯学部, 講師 (10170086)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2020-03-31
キーワードマイクロRNA / 唾液腺 / ストレス / 糖質コルチコイド / 交感神経 / アミラーゼ
研究実績の概要

近年,学校や企業でストレスに起因する自殺者が激増している。この社会現象を防ぐためにストレス度を数値化する診断方法が必須である。本申請でアミラーゼに替わる唾液腺のマイクロRNAを用いたストレスの評価法を探った結果,2種マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」の増加によって本質的なストレス状態を診断できる結論を得た。現在,交感神経の亢進に基づく唾液アミラーゼがストレスマーカーとして用いられているが,疑問が残る。「自殺を導く危険なストレス状態」とは緊張で一過性に交感神経が亢進した状態ではなく,「長期間の苦悩に耐えた結果,視床下部を介した抗ストレスホルモンによって身体が糖を補う生理的な応答を起こしている窮極な状態」と考える。2種マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」は長期のアドレナリン投与による交感神経促進の影響を受けないことから,アミラーゼとは異なり,緊張による交感神経単独の作用と本質的なストレスとを区別できる点で重要な意義を持つ。一方,抗ストレスホルモン(糖質コルチコイド)は唾液腺のアンドロゲン受容体を介して作用する報告もある。miR-141-3pやmiR-21a-5pはアンドロゲン依存性に増加したが,「miR-29-3p/let-7c-5p」の割合は変動しなかった。本質的なストレス状態を作るために糖質コルチコイドを投与した場合,常にmiR-29-3pが増加し,let-7c-5pが減少した。よって,2種マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」は緊張による交感神経の亢進やアンドロゲンの影響を受けずに,「抗ストレスホルモンによって身体が糖を補う生理的な応答を起こしている窮極な状態」を反映する。以上より,「miR-29-3p/let-7c-5p」の割合はアミラーゼに替わるストレスの斬新的なマーカーとなる可能性がある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

1)長期間のストレス時には交感神経が長期間亢進し続けることも事実である。生体でのアドレナリンの半減期は3分程度なので,投与に工夫が必要である。浸透圧性に収縮するカプセル(Alzet Pump 1002)内にアドレナリンを注入し,マウス背部皮下に埋め込み2週間連続投与し,唾液腺のmiRNAのパターンを検討した。対照と処置群で有意な変化はなかったことから,アミラーゼとは異なり,マイクロRNAの場合,緊張による交感神経単独の作用と下の3)に示す本質的なストレス状態とを区別できる点で重要な意義を持つ。
2)抗ストレスホルモン(糖質コルチコイド)は唾液腺のアンドロゲン受容体を介して作用する報告もある。miR-141-3pやmiR-21a-5pは雄性マウスに多く性差があったこと,睾丸摘除によって著しく減少したこと,睾丸摘除マウスにアンドロゲン投与すると増加回復したことから,これらのマイクロRNA種は性ホルモン依存性に変動すると考えられる。しかし,マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」は変動しなかったことからアンドロゲン受容体を介さないと示唆される。
3)ストレスの結果視床下部を介して糖質コルチコイドが上昇し,身体の蛋白質分解による血糖が上昇している本質的なストレス状態のmiRNAパターンを探ることを目的とした。①正常雄マウスにデキサメタゾン投与 ②睾丸摘除マウスにデキサメタゾン投与 ③睾丸摘除および副腎摘除マウスにデキサメタゾン投与した場合,何れにおいても常にmiR-29-3pが増加し,let-7c-5pが減少した。
よって,2種マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」は本質的なストレス状態で身体が糖を補う生理的な応答を起こしている窮極な状態」にのみ増加することから,(アミラーゼに替わる)本質的なストレスの斬新的なマーカーとなることを見出した。

今後の研究の推進方策

・マウス唾液中のマイクロ RNAパターンは内部標準を用いても非常に分散が大きく,ストレスの判断に困難を感じた。唾液採取日を変え同一マウスから2回唾液を採取しマイクロRNAパターンを比較すると,大きな分散はなかったことから採取法や測定誤差による分散ではなく個体差によるものと示唆される。今後,個体差を無くする内部標準の検討,分析方法の検討が必要と思われる。
・また,顎下腺内のマイクロ RNA と分泌唾液中のマイクロ RNA存在量パターンは必ずしも相関なかったが,健常状態と本質的なストレス状態による変動をさらに検討し,良い唾液中のストレスマーカーを見出したい。そして,ストレスの臨床的な診断が可能かヒト唾液で検証したい。
・唾液の場合,内部標準を用いても非常に分散が大きく,ストレスの判断に困難を感じた一方,唾液腺に含まれる2種マイクロRNAの割合「miR-29-3p/let-7c-5p」の増加による本質的なストレス判断法を見出せたことは重大な意義があり,興味深い斬新的なストレスを診断するマーカーと感じる。当初の計画にはなかったが,唾液腺に拘らずに,過剰糖質コルチコイド分泌で分解される筋肉,やや採取が簡便な血液,そして採取簡便な尿中の「miR-29-3p/let-7c-5p」の割合の変動検討も興味深い。
・さらに,「miR-29-3p/let-7c-5p」の割合の上昇はストレスのみならず,クッシング症候群等のマーカーにならないか,考察してみたい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [学会発表] MicroRNAs in mouse salivary glands as a putative Bio-Marker of stress-dependent diseases2019

    • 著者名/発表者名
      Kinji Kurihara
    • 学会等名
      The 9th Federation of the Asianand Oceanian Physiological Societies Congress
    • 国際学会

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公開日: 2019-12-27  

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