現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目標は, 日々我々が曝露するUVを任意の部位に装着した小型センサにてreal-time計測し, 血中VD量生成に必要な曝露量をSmart Phone等により通知するシステムの構築である.同目標を達成するには,(1)正確な個人UV曝露量を測定する手法の開発, (2)血中VD生成におけるUV曝露量と食事摂取VD量の関連性を明らかにする, (3)通知アプリの開発の3課題を達成する必要がある. 課題(1)に関し, ヒトが曝露するUVの総量を正確に測定するには皮膚露出部位全てにセンサを装着する必要があるが現実的には困難である. そこで任意の部位(例えば手腕部)を基に他部位の曝露量を推定する手法の実現性について詳細に検討を行った.結果, 高い妥当性を持って他部位の曝露量を推定しうる換算係数を得るに至った[1].加えて小型無線デバイスを使用することでwire-lessで測定データをPC, Smart Phoneに送信・記録する技術実現に目処が立ち, 煩雑性を上げることなく正確なUV個人曝露量の測定が可能となった. さらに課題(2)の解決を目指し, 共同研究者の有するFieldにて疫学調査を実施した. 具体的には緯度の異なる2つのField(北海道・熊本)にて60名の被験者をrecruteし, 異なる季節(夏・冬)における血中VD濃度とUV曝露量・食事摂取VD量の測定を行った. 結果, 血中VD生成に必要なUV曝露量の一つの目安を得るに至った[2]. これらの結果を基に, 来期, 課題(3)の通知アプリの作成に取り掛かる予定である.
[1] N. Eto, et al. Toho J of Med. 6(1). p.30-40. 2020., [2] K. Asakura, N. Eto, et al., Nutrients. 12(3). 2020.
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最大の目標であるヒトUV曝露量の至適量通知システム実現に向け,大きく2つの課題が存在する. 1つ目はこれまで開発・設計してきたプロトタイプの実機製作・実証実験である. 実証にはある程度まとまった数(数十~百個程度を想定)の外注製作が必要となり, 今年度中頃に発注・実機製作を行い, 実証実験に移行することを予定している(ハードウェア課題). 2つ目は通知システムのソフトウェア開発であり, これまで得られた知見を基に, Smart Phone上にreal-timeでUV至適量を通知するシステムを目指している(ソフトウェア課題). 基本的な技術設計は完了していることから,ハードウェア課題の実現は比較的順調に推移すると考えられるものの, 部品確保・実機試作への影響ならびに屋外でのボランティアを交えた実証実験への新型コロナウィルスの影響が危惧される. 一方, ソフトウェア課題に関しては基本的に研究室内で実現できることから時間的な遅延は起きにくいと考える. 現在,一部部品の生産停止および新型コロナウィルス による影響により若干の研究の遅れが出ているが,概ね予定通りに進行していると考える.
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究は課題実現に向け,個人UV曝露量Wire-Less測定システムの構築(2018~2019年前半期, 18ヶ月,完全に非拘束な条件下に おける各皮膚表出部位のUV曝露量測定を可能とするシステムの試作),構築システムを用いた疫学調査(2019後半期~2020年前半期, 12ヶ月) ,UV曝露量監視・通知アプリケーション構築(2020年後半期, 6ヶ月)を想定していた.一方,共同研究者の有するFieldにおいて疫学調査が先行実施されたことから,最終的な目標である至適量通知アプリケーションに必要な曝露データを2019年度に収集し,研究の進行に変更が生じている(アプリケーションの構築が先行し,システム構築がこれに続く形となっている).なお現時点においてシステム・アプリケーションに必要なデータを取得できたことから,研究全体の進行に変更はない.
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