令和元年度は、持久性運動後における糖質摂取量の相違が呼気中アセトン濃度の推移および運動パフォーマンスの回復に及ぼす影響を検討した。男性8名を対象に、疲労困憊に至るまでの持久性運動後に高糖質(体重あたり2.4g)を摂取する高糖質条件と、低糖質(体重あたり0.6g)を摂取する低糖質条件を設け、各指標の変化を条件間で比較した。また、1回目の運動終了2時間後の時点から、2回目の運動(最大酸素摂取量の65%強度で疲労困憊に至るまで運動を継続)を実施した。1回目の運動前から2回目の運動直後まで、呼気中アセトン濃度の変化を経時的に評価した(センサガスクロマトグラフにより評価)。また、前腕静脈から採血を行い、血中グルコース、乳酸、ケトン体濃度などの変化を検討した。その結果、低糖質条件では、2回目の運動直後において呼気中アセトン濃度の急激な上昇が認められ、高糖質条件に比較して有意に高値を示した。また、低糖質条件では、1回目の運動120分後の時点で血清総ケトン体濃度が高糖質条件に比較して有意に高値を示した。さらに、1回目の運動後における呼気中アセトン濃度の上昇と2回目の運動における疲労困憊に至るまでの運動継続時間には有意な負の相関関係が認められた。以上の結果から、持久性運動後における糖質摂取量の不足は呼気中アセトン濃度を上昇させること、この際の呼気中アセトン濃度の上昇は持久性運動パフォーマンスの回復と関連することが示された。なお、運動後における呼気中アセトン濃度の上昇には、肝臓のグリコーゲン量の低下が関与しているものと考えられた。
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