研究課題
脳の基底に存在する視床下部は炭水化物や脂質などの主要栄養素成分を脳内で最初に感知し、摂食行動や全身のエネルギー代謝を調節する。一方、微量必須栄養素のうち体外に排出されやすいBやCなど水溶性ビタミンを生体がどのように感知しているのかは不明である。そこで、研究代表者らはビタミンB群が解糖系を構成する複数の酵素の補酵素としてエネルギー産生に重要な役割を果たすこと・脳内での消費が多いことに注目し、ビタミンB群の恒常性維持を司る神経メカニズムが存在するという仮説を立てた。今年度は、ビタミンB1欠乏が摂食やエネルギー代謝の調節を司る脳部位(視床下部およびその周辺の脳部位)に及ぼす影響を検証した。ビタミンB1欠乏食をマウスに与えたところ、マウスは10日間程度で1日当たりの摂食量が通常の3割程度になり食欲不振症状が観察された。また、それに伴う体重の減少も生じた。一方、このマウスにビタミンB1を摂取させたところ、すみやかに食欲不振が消失し、体重の回復が見られた。そこで、現在、ビタミンB1欠乏状態のマウスとその状態のマウスにビタミンB1を摂取させたマウスの両条件において視床下部およびその周囲の脳切片を作製し、神経活動マーカーであるc-fosの発現パターンの解析を抗体染色により実施中である。今後、これらの部位でc-fosが陽性となった細胞の役割についてc-fos陽性細胞を可視化・操作することのできる遺伝子改変マウスを用いることで、さらに詳細に検証を行う予定である。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
Cell Reports
巻: 27 ページ: 1650-1656
10.1016/j.celrep.2019.04.040
Nature Communications
巻: 8 ページ: 4560
10.1038/s41467-019-12478-x