研究課題/領域番号 |
18K19778
|
研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
三輪 忍 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 准教授 (90402940)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | プロセッサ / アーキテクチャ / カーボンナノチューブ |
研究実績の概要 |
2018年度は,研究実施計画に基づき,超微細ナノカーボン・プロセッサ・アーキテクチャの評価環境の構築を行った.超微細ナノカーボン・プロセッサのアーキテクチャ・レベルのシミュレーション環境を構築するため,シミュレーション用計算機(HPE社 ML110 Gen10, XeonS 4110 2.1GHzを1基搭載,主記憶は32GB,HDD容量は2TB)を購入した.また,このシミュレーション用計算機においてCentOS 7のインストールを行い,カーボンナノチューブトランジスタ回路のシミュレータとしてHSPICEを導入した.さらに,構築した評価環境の動作確認のため,本研究課題申請前に行った予備実験(予備実験は別の計算環境で実施)の再実験を上記の評価環境にて行った.具体的には,スタンフォード大学が提供する32nmのカーボンナノチューブトランジスタモデル(Stanford CNTFETモデル)を用いて64ビットのリップルキャリー加算器を実装し,この加算器に適当な入力(最上位ビットまで桁上げ信号が伝搬するような入力の組み合わせ)を加えることによって加算器の遅延と消費電力の計測を行った.その結果,今回構築した評価環境において,予備実験において得られた結果と同様の結果を得られることが確認できた.以上のことから,プロセッサ内の主要な回路をカーボンナノチューブ化した際の性能と電力をシミュレーションするための評価環境は整ったと言える.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
カーボンナノチューブ回路のシミュレーション環境の構築は完了したものの,本研究課題の申請書において2018年度の開発目標に掲げていた,プロセッサ内の主要な回路をカーボンナノチューブ化した場合の性能と電力モデルの開発には至っていない.また,アーキテクチャレベルのシミュレータとしてGem5を上記計算環境に導入することを予定していが,Gem5の導入も未達である.これは,シミュレーション用計算機の選定と手配に想定していたよりも時間がかかってしまい,上記計算機の納品が年明けにずれ込んでしまったことが原因である.また,経費節減のために,シミュレーション用計算機はOSなしの状態のML110 Gen10を購入したが,HPE社によるサポート情報が十分ではなかったために,ML110 Gen10にインストール可能なダウンロードフリーのOSのディストリビューションとそのインストール方法を発見するのに手間取ってしまい,OSが起動するまでに想定以上の時間がかかってしまったことも原因の1つである.
|
今後の研究の推進方策 |
2018年度は,本研究課題に協力してくれる研究室学生がいなかったため,OSのインストールなどの準備作業もすべて研究代表者が行わなければならず,研究そのものに十分な時間を割くことができなかった.2019年度は1~2名の研究室学生(4年生)が本研究課題に関連するテーマで卒業研究を行う予定であり,彼らの協力を得ることで,2018年度と比較して研究開発の速度は飛躍的に向上するはずである.2018年度に未達であったカーボンナノチューブ回路の電力・性能モデルの開発を研究室学生1名と共同で実施し,2019年度の開発目標である超微細ナノカーボン・プロセッサの設計探索をもう1名の研究室学生と共同で実施する予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
シミュレーション用計算機の購入費用が当初の想定よりも抑制できたため,7,515円の余剰金が発生した.ただし,今後研究を進めることによって実験データが増加するのにともない,現在のHDD容量(2TB)では不足することが考えられる.HDD容量が不足した場合は,翌年度以降の助成金と合わせてHDDを増設する予定である.
|