本年度は、昨年度に引き続き、我々が提案した「学習の阻害」を利用して物体認識(画像分類)の認識精度を向上させる正則化手法であるShakeDropの有効性を実験的に検証した。昨年度には物体認識のデータベースを用いて、物体認識の精度を検証したが、今年度はその他の認識タスクである物体検出ならびにインスタンス・セグメンテーション(個別領域分割)を対象として、これらのタスクで標準的に用いられるMS COCOデータセットでの実験を通して有効性を確認した。また、昨年度に得られた成果である、ShakeDropが従来手法より高い認識精度を達成できる理由の解析結果が、専門外の研究者でも理解出来るように、図を用いた説明を考案した。そして、これらの成果を取りまとめて論文にまとめ、IEEE Accessに採録された。 実施内容を当初の研究目的である(1)学習能力の向上、(2)学習に使用するサンプル数を減らす方法の開発、(3)原理の解明との3つに照らすと、まず、(1)の同一のデータセットを用いた場合の学習能力の向上が、物体認識の大規模実験や他のタスクの実験を通して確認出来た。また、これは相対的に(2)の同じ認識精度を達成するために必要な学習サンプル数の減少を意味する。そして、ShakeDropの「学習の阻害による学習の促進」という現象は、特徴空間内でのデータ拡張であるという解釈を得ることができたため、(3)の原理の解明についても概ね達成することができた。したがって、本研究は当初の目的を達成できた。
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