研究課題/領域番号 |
18K19796
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 悠希 筑波大学, システム情報系, 助教 (10601883)
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研究分担者 |
橋本 朋子 (米村朋子) 明海大学, 総合教育センター, 講師 (90456707)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 潜水 / スクーバ / バーチャルリアリティ / 訓練 |
研究実績の概要 |
島国である我が国の周辺海域では,海運,漁業,マリンレジャーなど幅広い分野に渡る活動が行われている.中でも,海難救助活動やサルベージ作業,潜函工事など,海の安全や産業にとって潜水作業は欠かせず,潜水技術を持つ人材の早期育成が求められている.潜水作業にとって,海中の様々な状況を十分に体験し,いかなる状況にも対処できる対応力を身に着けることは必須であるが,プール訓練では状況の再現が難しい.そのため,実地訓練に頼らざるを得ないが,天候や波など,意図した海中状況になるとは限らない.また,訓練中における心理状態の把握が困難で,訓練プログラムや訓練中の指示内容が最適化されていない.以上から,十分な練度に到達するには多大な費用と時間を要する.そこで本研究では,スクーバ潜水訓練を一般プールで低コストかつ高いリアリティで実現可能なバーチャル海中体験環境を構築することを目的とし,本年度は以下の3点を研究課題に設定した. 1.運動・生体情報リアルタイム計測システムの開発 2.視覚刺激と引き戻し機構による水中無限海遊環境の構築 3.提案システムの実装および有効性の検証 初年度は,潜水用頭部搭載型ディスプレイの実装と水中で利用可能なモーションキャプチャシステムの導入を行い,潜水状態のユーザの位置・姿勢をリアルタイムに計測し,映像に反映させることに成功した.現在,上記システムの評価・改良を行うと共に,生体情報を計測するセンサの組み込みを進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は,潜水用頭部搭載型ディスプレイの設計・実装を行い,水深約4.0mでの動作を確認することができた.また,有線接続部分の接続を改良し,水中における安定した映像出力を実現した.また,水中で利用可能なモーションキャプチャシステムを組み込んだ.低コストで実現するため,通常のモーションキャプチャカメラに収まる水中ハウジングを導入し,映像出力用PCで処理することで,潜水状態のユーザの位置・姿勢をリアルタイムに計測し,映像に反映させることに成功した.これらの装置を用いた動作検証を行い,安定した潜水バーチャルリアリティ体験が可能であることを確認した.
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今後の研究の推進方策 |
運動・生体情報リアルタイム計測システムの開発では,初年度実装したシステムの評価・改良を行うと共に,生体情報計測機能をするセンサを潜水用頭部搭載型ディスプレイに組み込む.具体的には,視線計測ユニット,脈拍・皮膚温度センサをディスプレイに組み込めるサイズとなるよう新たに設計・実装する.また,ディスプレイ筐体もセンサに対応した設計を行い,両社を組み合わせる.モーションキャプチャシステムについては,システムの低コスト化・小型軽量化を進めるため,カメラ台数を最適化すると共に,インサイドアウト方式の導入を検討する. 視覚刺激と引き戻し機構による水中無限海遊環境の構築では,水中における空間移動錯覚生成手法に取り組む.まず,視覚誘導性自己運動錯覚および移動方向錯覚それぞれについて,その効果を地上環境と水中環境で比較する.その後,両社を組み合わせることによる空間移動錯覚について,実現可能性および有効性を検証する.さらには,身体引き戻し機構を設計し,模型を用いた検証実験によって機構の有効性,安全性を検証する. 提案システムの実装および有効性の検証では,スクーバ訓練の初歩的な技能である「各水深における中性浮力習得」に焦点を当てたバーチャル訓練計画を,専門家の意見を聞きながら設計する.
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次年度使用額が生じた理由 |
購入物品の価格が予定よりわずかに下がったため,金額に差分が生じることとなり,次年度使用額として残った.次年度の実験に用いる筆記用具代として使用する予定である.
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