研究課題/領域番号 |
18K19796
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
橋本 悠希 筑波大学, システム情報系, 助教 (10601883)
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研究分担者 |
橋本 朋子 (米村朋子) 明海大学, 総合教育センター, 講師 (90456707)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 潜水 / バーチャルリアリティ / HMD / スクーバ / 訓練 |
研究実績の概要 |
本年度は3つの課題に取り組んだ. 潜水用頭部搭載型ディスプレイの改良:これまではOculus Rift DK2のディスプレイ基板を用いていたが,解像度やリフレッシュレートが低かった.そこで高精細かつリフレッシュレートの高いディスプレイモジュールを新たに導入し,それに合わせた防水ハウジングの設計および実装を行った.また,ケーブルのジョイント部について,取り外しが容易な構造に変更すると共に,ケーブル類が収められているホースの直径を小さくすることで,装着時にケーブルに引っ張られるような違和感を提言した. モーションキャプチャシステムの改良:水中用ではないモーションキャプチャカメラに防水ハウジングを取り付けて運用していたため,水の反射の影響が大きく,設置位置やパラメータを毎回調整する必要があった.また,アクティブマーカを使用する必要があった.そこで,カメラ側に水中での減衰が少ない波長の光源を配置してモーションキャプチャを行い,設置やパラメータ調整の手間を大幅に削減した. 視覚刺激と引き戻し機構による水中無限海遊システムの検討:ユーザの身体を引き戻し,水中のある範囲に留まりつつ無限に水中を海遊しているかのような感覚を視覚刺激によって錯覚させるシステムの検討を行った.まず,ダイビングにおけるバタ足時を,初動時と定常時に分け,それぞれの運動時に身体に生じる加速度を調べ,知覚閾値と比較した.その結果,定常時では前提感覚の知覚閾値を超えないため視覚による加速度の補填は必要なく,初動時に対しては必要であった.そのため,視覚によって補填する必要がある加速度を運動感覚知覚モデルによって推定し,ベクションを利用することで十分に補填可能であることを示唆した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は9月からのプール工事および新型コロナウィルスの影響で,プールを使用することができなかった.そのため,改良した潜水用頭部搭載型ディスプレイおよびモーションキャプチャシステムの検証,無限海遊システムの実装および検証を行うことができなかった.
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今後の研究の推進方策 |
プールが使えるようになり次第,改良した潜水用頭部搭載型ディスプレイとモーションキャプチャシステムを用いたVR海中体験システムの検証を行う.また,今年度検討した無限海遊システムについて実装し,プールでその有効性を検証する.実装では,引き戻し機構をパッシブ型とモータを使ったアクティブ型をそれぞれ試作し,その有効性を比較する.視覚刺激による加速度感覚の補填では,まず視覚誘導性自己運動錯覚について,その効果を地上環境と水中環境で比較すると共に,水中におけるオプティカルフローと自己運動感覚の関係を定量的に評価する.その後,上記で実装した引き戻し機構と組み合わせ,引き戻されながら泳いだ時の移動感覚を評価する. 生体情報の計測では,視線,脈拍,皮膚温度等のセンサを潜水用頭部搭載型ディスプレイに組み込み,リアルタイムでユーザの心理的状況が把握できる環境を構築する. 最後に,これらを統合したVR海中トレーニングシステムを開発し,スクーバ訓練の初歩的な技能である「各水深における中性浮力習得」に焦点を当てたバーチャル訓練計画を,専門家の意見を聞きながら設計する.
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次年度使用額が生じた理由 |
見積時よりも価格が下がった物品があったため,残高が残ってしまった.翌年度分の実験用物品購入費として使用する.
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