昨年度までに対向噴流を指先皮膚表面に対して接線方向から当てることで、糸のような物体を触っている感触が得られることがわかっていたが、本年度は糸から平面に拡張することに取り組んだ。具体的には対向空気噴流ノズルをとマニピュレータの先端に取り付けて、三次元空間内のバーチャル物体の表面に指先から落とした影のように噴流を動かす、遭遇型力覚提示装置を開発した。指先の位置は再規制反射マーカを用いた光学式位置センサを用いて計測し、その動きに合わせてマニピュレータを用いてノズル位置を移動させる。しかしながら、指先と噴流の接触する相対位置のズレの影響が大きく、評価実験においては、マニピュレータ先端をVR物体の表面上を一定周期で移動させることとして、小指の一部をマニピュレータに接触させて、噴流と指先の相対位置のずれが極力小さくなるようにして評価実験を実施した。評価実験では、水平面、垂直面、傾斜面の3種類の形状を用意して、その上をマニピュレータ先端が正弦波関数に基づいて往復運動するように設定した。実験参加者には小指をマニピュレータに接触させて、指先は常に水平方向を保つように移動させた。この環境を用いて対向噴流による糸状のバーチャル物体が3種類の平面上を移動し、それに沿って動かした指先の軌跡計測や面の存在感に関するアンケート調査を実施した。平面と指先の相対的な角度の違いによって、糸が面に感じられる条件としては、指腹の接線方向に噴流を移動させた場合は平面として感じることが多く、指腹の法線方向に移動する場合は糸上のものを押し込んでいるような感覚が得られることが示唆された。また、マニピュレータが折り返し運動をするときに指先の動きに遅れが出て噴流の相対位置がズレることで摩擦のようなものを感じることもわかった。指先の皮膚変形も利用した力触覚提示の可能性を示唆する結果と言える。
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