本研究では,全方位からの直接間接光を含む「照明場」の統計的性質が物体に対する感性的判断に及ぼす影響を解析し,照明の空間構造が知覚に及ぼす効果を定式化することをめざした.具体的には,画像統計量解析や精密な心理物理学的計測を駆使して,照明統計量・物体画像統計量・質感知覚の関係を解析し,質感知覚を最もリッチにする「演出性の高い」照明場の構造を探索し,少数のセットの照明統計量が質感知覚に強い影響を与えることを示した.この成果は,視覚おける照明の力強い影響を再確認するとともに,建築,内装,撮影,商品デザインなど多様な工業分野における照明設計・評価のための新たな科学的分析の枠組みを提供すると考えられる.
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