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2020 年度 実施状況報告書

異常通信の発生要因特定能力を備えた次世代ネットワークトモグラフィの開発

研究課題

研究課題/領域番号 18K19804
研究機関東京工業大学

研究代表者

山田 功  東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)

研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2022-03-31
キーワードサイバー攻撃検出 / ネットワークトモグラフィ / 拡大ODフロー行列 / グループスパース / 拡大ODフローテンソル
研究実績の概要

高度なネットワークトモグラフィを実現するためには、対象とするネットワークの状態を、行列やテンソルや関数によって表現し、これらを正常な成分と異常が疑われる成分に分解し、異常検知を可能にする数理的な分析法を開拓することが不可欠となる。
そこでまず、超複素テンソル補完問題に取り組み、その成果論文を[Mizoguchi,Yamada2019]として信号処理のトップジャーナル(IEEE Trans Signal Processing)に発表し、国内外で大きな反響を得ている(溝口氏は令和2年度丹羽保次郎記念論文賞を受賞)。さらに多次元情報の効率表現を可能にする数体系として注目されるテンソル情報の分析表現[CP分解(Canonical Polyadic Decomposition)]の標準解法(Alternating Least Squares法)が雑音に脆弱であることを明らかにし、雑音耐性を備えたCP分解法実現に取り組んだ。この難問に取り組むため、まず「複数行列の近似同時対角化の新解法[Akema-Yamagishi-Yamada April, 2021a](IEICE Trans Fundamに発表)」を開発した。[Akema-Yamagishi-Yamada April, 2021a]は、同時対角化可能性の線形代数的特徴を活かしているため、CP分解に応用し、雑音抑圧機能を実現することができる新解法アルゴリズムを開発することができた。数値実験結果は新解法がALS法を凌駕する性能を示すことを実証しており、研究結果を纏めた論文は、既に2021年4月20日に
IEICE Trans Fundamから採録決定通知を受けている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ネットワークトモグラフィの飛躍的な高性能化の鍵となる数理的課題(行列分解、テンソル分解、Stiefel多様体上の最適化問題)に関して、既に、超複素テンソルのテンソル補完問題、複数行列の近似同時対角問題の新解法、雑音抑圧機能を備えたテンソルCP分解の新解法などで革新的研究成果を挙げ、いちはやく世界に向けて発信することができた。

今後の研究の推進方策

2020年度中の検討段階で、初期型ネットワークトモグラフィ実現の数理的基盤となっていたロバスト主成分分析法(RPCA:観測行列を低ランク行列とスパース行列の和に近似分解する分析法)に対する新解法の着想を得ている。これまでのRPCAでは、低ランク行列成分の抽出に伴う最適化戦略の評価関数として核ノルムが使われていたのであるが、特異値分解を要するため、スケーラビリティの観点で限界があることが問題となっていた。
最近、EPFLのグループの実験によって、グラフ正則化のアイディアによって設計された2次関数が、低ランク行列成分抽出用評価関数として、核ノルムと遜色ない性能を有していることが明らかになっている。本研究プロジェクト(2021年度)では、ネットワークトモグラフィ―の高度化のために、グラフ正則化のアイディアとLiGME ([Abe,Yamagishi,Yamada 2020])を組み合わせることにより、RPCAのスパース行列成分抽出性能を飛躍的に高めたスケーラブルRPCA法の実現に取組み、その応用法を検討する予定である。

次年度使用額が生じた理由

(理由) 従来のネットワークトモグラフィに使われてきた行列分解の代わりにテンソルのCP分解を使って高度なネットワークトモグラフィを実現するためにテンソルCP分解を高精度に実現する数値解法アルゴリズム開発に取り組んだ。2020年度はようやく「複数行列の同時近似対角化のための新アルゴリズム」の実現に成功すると共にこれを活かすことにより雑音抑圧機能を備えたCP分解法の開発にも成功した。ところが、文献調査やシミュレーションのために見積もっていた費用を削減することができた他、コロナウイルスの影響で国内出張(高知と長良川国際会議場)がオンライン開催となり、繰越金が発生することになった(KWSワークショップでのスペシャルセッション発表では明間氏が奨励賞を受賞した)。
(使用計画) 2021年度はプロジェクト最終年度にあたるため、プロジェクトのこれまでの研究成果発表の他、研究成果の更なる発展のためのシミュレーション検討を進める予定である。繰越金と2021年度の交付金を併せ、シミュレーション用計算機の購入の他、論文発表、国際会議、国内研究会等での成果発表での使用を計画している。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Approximate Simultaneous Diagonalization of Matrices via Structured Low-Rank Approximation2021

    • 著者名/発表者名
      Riku AKEMA、Masao YAMAGISHI、Isao YAMADA
    • 雑誌名

      IEICE TRANS. FUNDAMENTALS,

      巻: E104-A ページ: 680-690

    • DOI

      10.1587/transfun.2020EAP1062

  • [雑誌論文] An l 1-penalized adaptive normalized quasi-newton algorithm for sparsity-aware generalized eigen-subspace tracking2020

    • 著者名/発表者名
      Uchida Kengo、Yamada Isao
    • 雑誌名

      Journal of the Franklin Institute

      巻: 357 ページ: 5033~5057

    • DOI

      10.1016/j.jfranklin.2020.03.034

    • 査読あり
  • [学会発表] Exploiting Commutativity Condition for CP Decomposition via Approximate Simultaneous Diagonalization2020

    • 著者名/発表者名
      Riku Akema, Masao Yamagishi, Isao Yamada
    • 学会等名
      IEEE ICASSP2020
    • 国際学会

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公開日: 2021-12-27  

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