研究課題/領域番号 |
18K19804
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
山田 功 東京工業大学, 工学院, 教授 (50230446)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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キーワード | サイバー攻撃検出 / ネットワークトモグラフィ / 拡大ODフロー行列 / グループスパース / 拡大ODフローテンソル / 超複素テンソル補完 / LiGME正則化関数 / 代数的GME行列設計法 |
研究実績の概要 |
ネットワークトモグラフィでは、ネットワーク状態を、行列やテンソルで表現し、正常成分と異常成分に近似分解し、異常検知に活用することが中心戦略となるため、スパース情報を活用のための斬新な表現モデルと最適化モデルの実現研究と応用に取り組んだ。超複素テンソル補完問題では[Mizoguchi,Yamada2019](IEEE Trans Signal Processing;令和2年度丹羽保次郎記念論文賞)の成果を得た。テンソル標準分解[CP分解(Canonical Polyadic Decomposition)]では従来の古典的解法(Alternating Least Squares法)と全く異なるアプローチで雑音耐性機能を備えたCP分解法の実現に成功した「近似同時対角化の新解法[Akema-Yamagishi-Yamada,2021a](IEICE Trans Fundam 2021; 2021年度電子情報通信学会論文賞))」とCP分解への応用(IEICE Trans Fundam, 2022)。さらに、ロバスト主成分分析の超複素テンソル拡張にも成功した[Mizoguchi-Yamada 2021](APSIPA2021)。従来、ロバスト主成分分析やテンソル補完問題は、スパース性促進のために凸正則化項を加えた最小2乗推定問題に帰着されてきたが、凸正則化項は推定結果に深刻なバイアスを招くため、研究代表者等は特別な非凸正則化関数(LiGME関数)を提唱している。LiGME関数をネットワークトモグラフィに応用するには、モロー強化行列(GME行列)の効率的な設計が必要となる。2022年度は1回のLDU分解と直交射影計算で完結する代数的GME行列設計法の実現に成功した[Chen-Yamagishi-Yamada, 2023b](IEICE Trans Fundam, 2023)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ネットワークトモグラフィの高性能化の鍵となる数理的課題(行列分解、テンソル分解、Stiefel多様体上の最適化問題)に関して、既に、超複素テンソルのテンソル補完問題、複数行列の近似同時対角問題の新解法、雑音抑圧機能を備えたテンソルCP分解の新解法、超複素テンソルの最良低ランク近似表現(超複素テンソル特異値分解)の導出および、ロバスト主成分分析の超複素テンソル拡張などの研究成果を挙げ、世界に発信することができた。さらに、ネットワークトモグラフィ等、スパース信号処理の発展に寄与するために、研究代表者等が提唱してきたLiGME型最小2乗推定モデルに関して、1回のLDU分解と直交射影計算で完結する効率的な代数的GME行列設計法の実現に成功することもできた。
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今後の研究の推進方策 |
幸い、2022年度の段階で、代数的GME行列設計法の実現に成功し、また、LiGME型最小2乗推定モデルに凸制約条件を柔軟に課すことを可能とするcLiGMEモデルの実現にも成功している(Yata-Yamagishi-Yamada,Journal of Applied and Numerical Optimization, 2022)。一方、スパース性活用信号処理の応用は、機械システムなど、ネットワークシステム以外の新領域システムにおける異常検知問題にも広がりはじめている。ところがこれらの新領域で応用されているモデルは、スパース性促進のために凸正則化項を加えた最小2乗推定モデルに留まっており、異常状態時に顕れるスパース性が十分に活用できていないのが実情である。2023年度は機械システムなどの異常検知問題にもLiGMEモデルを適用し、その有効性を実証することを検討している。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で、11月末から11月初に予定していたLinz出張(RICAM, Linzでの招待講演)がオンライン講演となってしまった。RICAMの特別ワークショップでの招待講演は2022年3月2日に主催者からメールで依頼があった)。ワークショップには欧米を中心とした逆問題の研究者が集うため、トップレベルの研究者と情報交換できることを楽しみにしていたのであるが、11月時点でCOVID11の勢いは衰えておらず、対面での講演・情報交換は不可能な状況にあった。その結果、当初Linz出張用に見積もっていた費用を削減することができたため、繰越金が発生することになった。
(使用計画) 2023年度はCOVID11の影響は限定的なるとみている。これまでの研究成果を新領域のシステムに関する異常検知に応用することを検討し、その成果を発表するための費用として有効に活用させていただく予定である。
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