本研究は2つの着眼点、仮説に基づいており、実施される研究はこの仮説を検証するように行われる。本研究の第一の仮説は、「指先で触れる際の触力覚は、指先に提示される必要はないのではないか」というものである。指先を提示対象としなければ、例えば前腕の大面積に提示装置を配置でき、アクチュエータに課せられる制約は劇的に軽減される。こうした異部位提示は、感覚義手の分野で喪失部位の感覚を残存部位に提示するという形で数多く提案されてきたが、振動・圧迫を記号的に伝えるに過ぎなかった。また他の手指や足裏に提示する提案もあるものの、認識や作業にとってもっとも重要な多自由度の力提示は行われておらず、皮膚感覚の分布提示に留まっていた。 本年度は昨年度の延長課題となる。昨年度コロナ禍の影響で国際学会発表が取りやめとなり、その分の旅費を研究費として延長申請した。頭部への提示に関しては、HMDに内蔵した空気吸引型の触覚提示装置が生じさせる皮膚変形についてFEM解析を行い、背面への提示に関しては振動ではなく圧覚を用いた場合の検討を行った。
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