符号化開口を備えたカメラを用いて、動的光線空間の圧縮撮影に取り組んだ。これまでの取り組みにおいて、同じ撮像系を用いて、まず静的な光線空間の取得に取り組み、そののち、これを動的な光線空間に拡張してきた。2020年度には、動的光線空間の取得においてフレームレート高速化や開口パターンに制約がある場合についてさらなる解析を進めるとともに、これまでの進捗をまとめて、国際会議、および論文誌上で発表した。 我々のカメラ実機の開口部は反射型液晶素子を用いて実装されており、任意の濃度のパターンを設定できる。しかし、反射型液晶素子には、高価であること、光の減衰率が大きいことなどの問題もある。これらの解決策として、物理的に穴を開けたパターンを開口面で回転させる方式を考えた。この方式では、透過率はON/OFFの2値に限定され、かつ同一パターンの回転による符号のみが可能であるため、開口パターンが制約される。我々は、シミュレーション実験により、この制約のあるケースにおいても、任意のパターンと遜色のない品質で動的光線空間が撮像できることを明らかにした。 2020年8月に開催された国際会議(European Conference on Computer Vision)においては、動的光線空間の撮像において、被写体の動きと視差を分離するため、二つの開口パターンを交互に用いて画像を撮影し、連続する3時刻の撮影画像を用いて復元を行う手法について報告した。さらに、論文誌上においては、イメージセンサ上でのカラー処理(Bayerパターンのデモザイキング)がある場合において、圧縮撮像された光線空間の品質を向上する手法について報告した。また、光線空間のデータごとの復元品質の違いを予測・分析する新たな枠組みを提案した。
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